夢も未来もない旅立ち
[3/11]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
で来た。
(……このリーグで優勝すれば、莫大な賞金が手に入る。そうすれば、あの子を治してあげられる)
「ねえ涼香。もし僕が勝っても……賞金はあなたに渡すって言ったらどうする?」
「え……?」
「僕は涼香がどんな思いでここまで来たかは知ってる。賞金をあげるから負けろっていうんじゃない。涼香とは……心から楽しめるバトルがしたいんだ。お金や地位に囚われるんじゃなくて、昔一緒にトランプで遊んだ時のような……」
「四葉……」
四葉は飄々としていて感情を表に出すタイプではないが、その実貪欲に駆け引きを楽しみを求める性格だ。旅に出る前はよくおもちゃのコインを賭けてポーカーやドンジャラで遊んだものだが、ゲームの腕前だけでなく言葉巧みにこちらの心理を誘導するのが上手く、いつも涼香が負けて困った顔をしていてそれを見る度四葉は楽しそうに笑っていた。
だから自分と純粋にバトルがしたい。そう言ってくれているのだろう。
「ありがとう、四葉。だけど……その言葉には甘えられないわ。あの子と約束したの。絶対に優勝するって。百パーセントあなたに勝てる自信はないけど……それでも、やってみせる」
「そう……でも、その方が涼香らしいよ」
ともすれば厚意を無碍にするような言葉だが、四葉はニヒルに微笑んだ。責任感の強い涼香がそう答えることは、半ば聞く前から分かっていたからだ。
「でも、やっぱり後で賞金くれって言ってもあげないからね?」
「女に二言はないわ」
「それ、男が言うセリフだよ」
男勝りな涼香の態度に軽口を言うのも、いつも通り。その後、二人は本格的に思考する。連絡は取りあっているから、お互いのポケモンのことは自分のポケモンの様に知っている。だからこそ、簡単には相手の手を読めない。相手の手を知れば知るほど思考は複雑化する。
(それでも、四葉のマシェードに私のゴウカザルをぶつけられれば勝てる。後はその状況にどうやって持っていくか……)
旅するときに貰ったのは、涼香がヒコザルで四葉がナエトルだった。タイプとスピードを考慮すれば、自分のゴウカザルが勝つはずだ。だが四葉の思考の裏を書くのは並大抵の難易度ではない。先の話で出たトランプで遊んだ時も、どれだけ裏を掻こうとしても丁度その一枚上をいくのだ、四葉という少女は。先に決定したのは、四葉の方だった。
「……決めた」
「もういいの?読みに見落としがないといいけど」
「完璧だよ、涼香の考えることなんてお見通しさ。……さて、僕は少しお花でも摘んでこようかな」
「……そういうところ、変に気取ってるよね」
「友人同士とはいえデリカシーは大事だからね。――くれぐれものぞき見なんてしないでおくれよ」
「もう、そんなことするわけないでしょ」
そう言って、四葉は控室から出
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ