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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
自動自在 念動剣
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な動きをしようが所詮は剣士の魂も技も宿らぬまがい物。どんなに数をそろえても真の達人を相手にしたならば、剣筋を見切られて相手にならぬ。だが、そこに我が剣が加わればどうか?」
八本の自動剣に二本の手動剣。魔道具による虚の動きに実の剣を潜ませた自働で動く八本の剣と、術者の意思で自在に動かせる二本の剣による波状攻撃。それはまさに剣の舞、剣の陣。利剣乱舞。
法眼の身に無数の傷が生じる。しかし刃の嵐によって本来ならば全身を朱に染めているほどの手傷を負っているはずなのだが、すべて浅傷だ。
「おぬし、妙に硬いな。身体強化の魔法を使っているようだが、いつの間にか用いるとは、やはり手練れよ」
「まぁ、魔法といえば魔法かもな」
法眼が使用しているのは硬気功や硬功夫、あるいは鉄布衫功と呼ばれる気功術だ。体内の気を張り廻らせて肉体を鉄のように硬化させる術で、長時間維持できるものではないが上手く呼吸を合わせれば小口径の銃弾くらいは防ぐことが可能である。
「手足の一、二本は頂戴して言うことを聞かせるつもりであったが、加減を誤り殺してしまうかもな」
「魔人にするとか言っていたな。だが妙だぞ、俺の記憶が確かなら魔人とやらになると完全に理性を失い、破壊衝動にまかせて暴れまわる、会話もままならないほど狂暴化すると聞いている。あんたはたしかに狂っているかもしれないが、こうして話ができる」
「制御された狂気。それこそが我ら魔人衆の強さの要訣のひとつよ。おまえも仲間になればわかる。どうだ、少しはその気になったか?」
「制御された狂気の他にも、偏狭な枠組みにも囚われてしまうのかな」
「偏狭な枠組みとはなんのことだ」
「あんたは片腕や片手といった揶揄に対して異常なまでの怒りを覚える。だがその一方でみずからの二つ名に独臂などと隻腕を意味する言葉を使っている。劣等感と矜持のない交ぜになった複雑怪奇な感情。これを偏狭な枠組みと言わずしてなんと言う」
「そうか、そんなに激昂していたか。ふふふ、こうなると自分でも激しているかがわからなくてな」
「制御された狂気って、それ全然制御されてないじゃねえか。それなら魔人とやらになるのはお断りだな。己を律することができなくて、なんのための力か。制御できない力なんぞに価値なぞないわ」
「そんなふうに思っていたことが、我にもあったかもな。だがそれならどうする、このまま刻まれて死ぬか?」
「いいや、切り抜けるさ」
手にした布巾を卓に戻し、代わりに剣を手にした。最初に撃退した破落戸の持っていた剣だ。
「ほう、布切れを捨て、ついに武器を手にするか。たがそのようなチンピラのなまくら剣で我が剣陣を破れるかな」
「善書は紙筆を択ばず、妙心は手にあり。てな、こうすればいいのさ―― オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ」
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