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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
自動自在 念動剣
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 魔人。
 たったひとりでひとつの国を滅す力を宿した存在。それが法眼の目の前にいた。
 それも、こともあろうに仲間になるよう持ちかけてきたのだ。

「断る」
「ほぅ、理由は」
「このような無道な殺戮をやらかす輩の仲間になぞなれるか」
「なるほど、たしかに道理だ。だが我らの仲間になればそのような些末なことは気にならなくなる。そしてこのような力を得ることもできるぞ」

 周囲の剣がゆっくりと旋回をはじめた。四本が上段を右に、四本が下段を左に、それぞれ動き出す。

「……こういうのは術者の意思で自由に動かせるとか自動で動く。凝ったやつだと手練れの剣士の技を記憶して、自働で動くのに加えてめちゃくちゃ巧みってのが定番だが」

 右から、左から、前から、後ろから、刃が迫る。
 前後左右から空気を引き裂いて、刃が奔る。
 法眼は卓上の布巾をつかみ取り、それを風車のように旋回させた。気を張り廻らせて肉体を鉄のように硬化させる鉄布衫功の応用で、手にした布巾をほどけないように絞り上げ、鉄鞭の如く硬質化したのだ。
 映画好きの読者は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』の布棍を想像するといい。
 受け流し、打ち落とし、なぎ払い、絡めとる。

(集団剣法か! ひとりひとりが間髪入れずに切り込んで相手が態勢を崩した隙を狙う、四方八方を囲んで一斉に斬り込む、天然理心流の草攻剣や山攻撃破剣に近い。実に正確な剣筋。いや、『正確すぎる』剣筋だ)

 早く正確だが、あまりにも単調な剣の動き。
 恐らくは自動攻撃機能つきの魔道具といったところか。法眼は剣の攻撃パターンを即座に見抜いた。
 法眼の脚が上がり、アイゼル目掛けて卓を蹴り飛ばす。

「むぅ!?」

 『剣』による戦いの常道を外した無法の反撃。剣豪として名高い室町幕府十三代将軍・足利義輝は畳を盾にした雑兵の群れに押し込まれ、身動きのできないところを槍で突かれて殺害されたという。
 法眼もまた卓という盾を使い、相手を制しようと試みたのだ。
 なにもないのは道場だけ。身の回りのすべてを武器とする、法眼流の動きだ。
 アイゼルの腰にある佩刀が抜き放たれ、卓を×の字に切り裂く。そこに法眼の姿はない。
 上だ。
 蹴り飛ばした卓に意識が向かい、視界を塞いだ一瞬の隙をついて跳躍し、脳天目掛けて降り下ろした布棍はしかし、卓を切り裂いた二本の剣によって防がれた。
 恐るべき反応速度である。

「おお! オオ! 雄々々々々々! 我に『我が剣』を抜かせるか! これはよき敵を見つけたり!」

 八本の剣による攻撃に、さらに二本の剣が加わり、一〇本の剣が乱舞する。
 するとどうだろう、単調で精彩を欠いていた剣陣の動きが劇的に変化した。

「なるほど、両方か!」
「いかに正確
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