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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋が奏でし二重奏 U
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嘲謔を置いていた。
同時に、自分の咽喉が嗚咽を洩らすのが聴こえた。この感情は、紛れもなく畏怖だろう。何しろ彼女の髪が──幻視ではなく、その微細な毛先までも傀儡のようにして、虚空に浮き上がらせていたのだから。瑠色の光靄とその光景とが相まって、どうにも彼女が人間だとは思えなかった。その風采から、ギリシア神話に著名な怪物──メデューサを想起させられてしまうほどには。
「っ──」
《明鏡止水》の眼は、なおも捉えていた。理子の四肢を全方位から奇襲した銃弾を、彼女は傀儡にしたその髪で、いとも容易く軌道を変えさせてしまった──ということを。
冷や汗が頬のあたりに流れていったのを、手の甲で拭い取る。張り付いた髪を解き払うことも忘れたまま、今度はこちらが茫然とさせられてしまった。理子が髪を自在に操作した──超能力めいたその事実にも内心で驚愕こそすれ、武偵校でも超能力者は稀有ではない。問題は、単なる髪であるはずのそれが、銃弾の軌道を逸らしたことだった。現に彼女は、無傷なのだから。
「……その程度か? 陰陽師」
睥睨の眼差しを、理子は自分に向けている。悄然と仄かな歓喜を綯い交ぜにして。
「……ふふっ、まさかね」胸中を気取られないように、磊落に笑みを零す。
「だから──容赦はしないよ。自分は護りたいもののために、そうして、その者の目的を達成するために動いているんだからね。君は言うなれば通過点だ。……分かっているはずだけれど」
「お前たちにとっては通過点でも、あたしにとっては千載一遇の大舞台だ。だから妥協もしない。《イ・ウー》で研鑽したこの能力でもって、本気で倒しにかかる」
──二重奏を、あたしに奏でろ。
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