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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋が奏でし二重奏 U
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の端を爛々と突っついていく。

咄嗟の足払いを後退して躱しながら、反撃を試みる彼女の挙止動作を観察していた。一瞬間の隙に手に握らせたのは──UZI。銃を手にする時間が欲しかったのだろう。
マニアゴナイフを2本とも理子の目許に向けて投擲しながら、その軌道にも傾注しつつ《緋想》とベレッタを抜く。片方は避けられたが、もう片方は掠めた程度だった。これでも充分だ。
そうして《明鏡止水》を発動させ、UZIとナイフを手に間合いを詰めてくる理子を迎え撃つ。距離は僅か数メートル。この距離なら──確実に当たる。そう確信した。

彼女がどんな動作で肉薄してくるのか、その予備動作、虚空に靡く微細な髪に至るまで、《明鏡止水》の眼は捉えている。理子が構えたUZIが、発砲の瞬間に固定されるその一刹那──それさえも手に取る以上に分かり切っていた。べレッタの照準越しにUZIを覗きながら、逡巡せず引き金を引く。それでも脈搏は、いつもよりも上をいっていただろう。

マズルフラッシュが焚かれると同時に、銃弾は右螺旋回転を維持して飛来していく。虚空を穿つように回転していくその軌道、果ては何処に行き当たるのか──それは自分にとって明々白々のことなのだ。バレルの周囲、この僅かな隙間だけを頼りにして、反撃をしただけのこと。
そうして狙い通り、銃弾は着弾した。漆黒のUZIに──照明を映射させた鈍色を、この一帯に振り撒きながら、華奢な理子の掌から弾き失せていく。金属音が、遅れて聴こえた。


「さぁて──本番の開幕だ」


憫笑し、腕を掲げて指を鳴らす。刹那の異変に茫然としていた理子が目を見張ったのは、その時だった。(ボウ)と彼女の四方を取り囲むようにしたのは、虚空に顕現された《境界》。
前方には如月彩斗が、後方には神崎・ H・アリアが、頭上四方を《境界》が包囲している。文字通りの四面楚歌の渦中に置かれてもなお、彼女は焦燥していた。同時に躍起になっていた。


「これだけの数、全てを対処しきれるかな?」


掲げた腕を振り下ろした一刹那に、四方の《境界》は銃弾を吐き出していく。この春時雨は雅懐を抱くには程遠いものの、卯の花腐しの役割を果たしてくれる程度にはなるだろう。


「──穿て」


掲げた腕を、振りかぶった。







我ながら、零した声は冷淡であったように思う。それでも今だけは構わなかった。
端々に前髪の掛かる《明鏡止水》の眼で捉えた数十発の銃弾は、虚空に螺旋を描いている。それらが彼女の肉叢──四肢のみを穿つかと見えたところの一刹那の異変すらもまた、捉えていた。
理子が華奢な身?から横溢させているのは、瑠色の光靄(ひかりもや)である。彼女を護持するかのように刻一刻と蓊鬱たり、同時に層一層の只中に、
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