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ある晴れた日に
412部分:雉鳩が消えたその十二
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雉鳩が消えたその十二

「よくこんなのを許婚にするよな」
「全くだよ」
「いい加減にしないと玄界灘に放り込むわよ」
 咲はその二人に対してむっとした顔で言い返した。
「そんなにおかしい?咲に慶彦さんがいてくれるのは」
「山月堂の人か」
「まあお菓子好きの柳本には合うか」
 何だかんだで咲を認めてもいる彼等であった。
「まあとにかくな。四人な」
「彼氏作ったらどうだよ。できたらな」
「できたらってのは余計だよ」
 春華はモダン焼きを食べるのを途中で止めて最後の言葉にくってかかった。
「その最後のってのはよ」
「けれど実際のところいねえだろ」
 野本はすかさず突っ込みを入れた。
「おめえ等彼氏。そうだろ」
「まあね」
「それはね」
 静華と凛が渋々ながらそのことを認めた。
「っていうかそれあんた達も同じじゃない」
「男だけでお祭なんて」
「けれどこれはこれで楽しいよ」
 桐生が答える。見れば彼だけ青と白の着流しである。その着流し姿がやけに似合っている。
「気がねなく遊べるし」
「気がねなくね」
「うん、楽しく」
 こうも奈々瀬に話す。
「遊べるから」
「それはわかったけれど」
 ここで奈々瀬はさらに言うのだった。
「男組全員よね」
「そうだよ」
 桐生は奈々瀬の今の言葉に頷いた。
「それがどうかしたの?」
「加山と竹山は何処?」
 彼女が尋ねたのは二人のことだった。
「今日は一緒じゃないの?」
「後ろにいるぜ」
 野本が少しうんざりとしたような顔で答えてきた。それと共に後ろを親指で指し示してみせる。顔は奈々瀬達に向けたままである。
「後ろでよ。射的やってるぜ」
「射的!?」
「そうさ。それで景品漁ってるんだよ」
 それをしているというのである。お祭には付き物の出店の一つである。
「プレステのソフトやらおもちゃやらな」
「プレステのソフト!?」
「何かいいのあるかしら」
「全部あいつが持って行ってしまうからな」
 野本はさらにうんざりとした顔になっていた。
「もうよ。あいつ射的すげえ上手いからよ」
「そうなんだ」
 奈々瀬はそれを聞いて目をしばたかせた。
「そんなに上手いの」
「百発百中だぜ。まあ出店の親父が泣くことになるけれどな」
「何か親父さんが可哀想ね」
「そうね」
 咲は奈々瀬の今の言葉に頷いた。百発百中ならば確かに、と思ったのである。
 そしてここに今度は。別の女組が来たのであった。
「あれっ、あんた達」
「皆で集まってるのね」
 明日夢達であった。千佳も一緒にいて四人であった。見れば四人共浴衣を着ている。明日夢は赤に白い菊、恵美は青に赤紫の紫陽花、茜は黄色に赤の金魚である。千佳は白で青い朝顔でそれぞれの浴衣を着ているのであった。
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