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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
魔人襲来
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 残った半分は、堅気の者ではない。
 いずれも剣や槍などの武器を手にしている。近くに魔物ハンター組合(ギルド)があるため、多くのハンターたちもこの酒場を利用していたのだ。

「おいおい正気かよ、おっさん!」
「妙な魔法を使いやがって……いや、魔道具か?」
「いったいどんな付呪がされてんだ?」

 遮光眼鏡(バイザー)の男を囲んだハンターたちは、宙に浮かんだまま血を滴らせる剣を見て口々に漏らす。

「おまえたちに用はない。そこの男のように死にたくなければおとなしく席に戻れ」

 そう言われたからとハイそうですかと退くわけにもいかない。彼ら魔物ハンターもまたひとりひとりが腕に自身のある戦士であり、面子もある。
 このように軽んじられることは沽券に関わるのだ。
 ハンターたちの間に怒気が満ちる。

「今回の魔物狩りはもうけが少なくてね、殺人犯をしょっぴいて礼金をもらうことにするぜ」
「良さそうな剣を持ってるじゃないか、あんたが役人にとっ捕まってそいつを没取される前にオレたちがその魔道具をいただくとしよう」
「そうそう、腕が一本しかないのにそんなに剣を持っていても無――」

 静止していた剣が飛燕の如く翻り、「無駄」と言いかけた男の腕を切り落とすと同時に首を刎ねた。

「この片腕野郎がッ!」

 それが引き金となった。
 ある者は剣で斬りかかり、ある者は戦棍(メイス)で殴りかかり、ある者は槍で突き刺し、ある者は弓で射ようとした。
 そのすべての者が遮光眼鏡(バイザー)の男の背中にあった剣に、自動的に抜き放たれた七本の剣によって命を奪われた。
 剣や槍を持った腕ごと首を裂かれた者、弓弦を引くよりも速く飛来した剣に肘窩(ちゅうか)と胸を同時に刺し貫かれた者、

投網(レーテ)だ! 投網(レーテ)を使え!」

 投網(レーテ)とは魔物ハンターが好んで使う捕獲用ネットのことだ。縁に鉛などの(おもり)がついており、相手の行動を阻害する効果に優れている。
 何人かのハンターが投網(レーテ)を投げて剣の動きを封じようとするが、機敏な動きで避けられてしまい捕獲に失敗した。
 剣光が煌めき鮮血が飛び散る。持ち手のいない剣の乱舞によってハンターたちは片腕をなくした死体となり血の池と化した酒場の床にころがる物言わぬ骸となる。

「ひ、ひえぇぇぇ……ッ!」

 その場を脱する機会を逃した従業員たちがカウンターの奥で腰を抜かし、四つん這いになって厨房に逃れようとする。

「おまえたちも、片手と言ったか?」

 地を這う腕を目掛けて飛来する剣にゴブレットが投げつけられ、軌道を逸らした。
 法眼が印字打ちの要領で投げつけたのだ。

「もうやめろ、俺に用があったんじゃないのか」
「ん? ああ、そうであ
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