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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
魔人襲来
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いう二〇世紀初頭くらいの文明レベルだが、その時代の技術にそぐわない。銃火器もないし、魔法や魔道具の存在がこのような歪な世界を構成しているのだろう。いや、『いびつ』という表現はいささか失礼かもな。この世界にはこの世界の独自に発展してきた歴史があるんだ。異世界の俺の価値観で歪んでいるだのおかしいだのと思うのは自己中心的というやつだ、多様な文化を尊重せねば」
酒場で蜂蜜酒を飲みつつそのような物思いに耽っていると――。
「キイチ=ホーゲンだな」
フードを目深に被ったローブ姿の男が五人、声をかけてきた。
「領主様からたんまり報酬をいただいたんだろう? ケチケチしないでこんな場所よりも良いところで飲んだらどうだ。良い場所を知っているから、ちょいとついて来いよ」
フードから見え隠れする男たちの顔は無精鬚に覆われ、みな凶悪な面構えをしている。とてもではないが堅気の人には見えなかった。大金を手にしたよそ者がいると知って
強請
(
ゆす
)
り
集
(
たか
)
りに来た手合いであろう。
「…………」
「聞いているのかホーゲン」
「…………」
「おい、ホーゲン! 無視するんじゃねえ!」
「俺の一族に代々伝わる訓戒があってな」
「ああ?」
「初対面の人を呼び捨てにする輩は狗や猿の仲間だから返事をする必要はない。という訓戒だ」
「……いい度胸じゃないか」
男のひとりがローブの前を開いて見せると、腰に剣を差しているのが見えた。
「ずいぶんと腕に自信があるようたが、ここでひと暴れしてみるか? 関係ない連中に迷惑がかかると思うが、そうなったらおまえの良心も痛むだろう?」
「いいや、あいにくと全然、これっぽっちも痛まないね」
「なんだと?」
「巻き込むのはおたくらであって俺じゃあない。横暴で迷惑なのはそっち。断じてこっちじゃないからな、この店の連中どころか街の住人すべてが巻き込まれようが、それはすべてそちらの責任であって俺の知ったことじゃないね」
相手に責任転嫁しようとする悪党の愚劣な詭弁は法眼の剛毅さによってあっけなく粉砕されてしまった。
法眼はこの類いの恫喝が嫌いである。
他人の悪辣さや卑劣さを自分の罪として背負いこむ必要なぞないのだ。悪党の犯した罪は悪党自身がつぐなうべきである。
「言ったな、後で後悔するなよ」
「後で後悔だって? 後悔ってのはもともと先にするものじゃないだろ。光物をちらつかせる暇があるなら少しは国語の勉強をしろ、無学者め」
「野郎ッ!」
男のひとりが剣に手をかけ、抜こうとするが抜けない。法眼が右手で柄頭を押さえていたからだ。ほぼ同時に左の掌で男の顔を下から突き上げるようにして打つ。
顎を強打され、のけ反るようにして倒れた。法眼の手に男の剣が残る。
「ここは食堂だ、人斬
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