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ある晴れた日に
410部分:雉鳩が消えたその十
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雉鳩が消えたその十

「たまにはね。私達のことは気にしないで」
「お母さんにならなくていいから」
 奈々瀬も言う。
「別にね。だから」
「お母さんって」
「たまには娘達に親孝行させてよ」
 静華の笑みが一番穏やかなものだった。
「だから。二人で楽しんできてよ」
「じゃあ」
「人の好意は素直に受け取るもの」
「特に娘のは」
 少し茶化ししながらの今の五人の言葉だった。
「そうよ。だからね」
「二人で楽しんできたらいいじゃない」
「楽しんだらって」 
 そう言われてもじゃあ、とは言えない未晴だった。彼女の性格として。
「けれど。皆が」
「同じこと何度も言わせないの」
「そうそう」
 だがここは五人はこのまま押し切ることにしたのだった。にこにこと笑ってそのうえで続ける。
「いいじゃない、本当に」
「彼氏いるんだし」
「けれど」
「だから。何度も同じことはね」
「わかる?」 
 もうこれ以上は彼女に拒ませないつもりの二人であった。
「言わないから、もう」
「行きなさいって」
「そこまで言うのなら」
 そしてここは押し切られてしまった未晴であった。
「そうさせてもらうわ」
「じゃあ三日後ね」
「それでいいわね」
「ええ」
 三日後というのは確認された。
「じゃあ浴衣着てね」
「浴衣はあれよ」
 咲が他の五人にここで告げる。
「それぞれお家まで持って行っていいんだって」
「あれっ、ここで着るんじゃなくて?」
「お家に持って行っていいの」
「奥さんがそう行ってたわ」
 こうも皆に告げる咲だった。
「いいんだって。本当に」
「何か。悪いけれど」
「だったら」
 そしてそれに素直に頷く彼女達であった。
「お家に持って帰ってね」
「そっから浴衣着てお祭に行こうね」
「そうしよう」
 これで話は決まった。そうしてそれぞれ浴衣を持ったうえであらためて言葉を交えるのであった。
「じゃあそういうことで」
「お祭でまたね」
「またね」
 それは別れの言葉であった。六人はそれぞれ浴衣を貸してもらってそのうえで家に帰った。だがこの三日の間に恐ろしいことが起こったのだ。
「あれっ、連絡取れないの?」
「そうなのよ」
 あの五人だった。五人は夜道を横一列になって歩いていた。中央に咲がいて右側には咲きの方から見て近くから春華と凛、右側には近くから静華と奈々瀬であった。
「いないのよ。っていうか携帯に連絡つかないのよ」
「?それじゃあ」
 奈々瀬がそれを聞いて言った。
「もう音橋とデート中なのかしら」
「それにはちょっと早くね?」
 春華は携帯の時計機能から時間を見て言うのだった。
「まだ五時にもなってねえよ」
「けれど早くからってあるじゃない」
 静華はそれで
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