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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
リッツバーグ伯爵邸にて
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純に魔法を使うのも芸が無いというもの、まず我が一族に伝わる不思議の術をお見せします」
「ほう、それはどのようなものだ」
「それを使ってもよろしいですか?」

 法眼はテーブルの上にあった布巾で頭を覆い、ヴェールのように目隠しをする。

「これで視界が妨げられました。目の前になにかかざしてみてください」

 ラッセルが言われるままに手近にあったポットをかざしてみる。

「ポットです」
「ほう! では……」

 続いて無言で燭台を差し出すと、法眼はこれも言い当てた。
 花瓶、フォーク、ワインボトル、皿、人形――。
 なんども繰り返し、そのすべてを言い当てる。

「……視覚に頼らずとも魔力による周囲の感知は可能だ。しかしそれは魔力を持った生物に限られる。無生物には反応しない。という事はそれ以外の魔法を使っていることになるが、おぬしが魔法を使った気配はない」
「この術は魔法ではなく私の一族に伝わる陰陽術という不思議の術のひとつで射覆(せきふ)と言います」

 射覆(せきふ)とは箱や袋の中に入れてある物を言い当てる陰陽術で、賀茂忠行という平安時代の陰陽師はこの術の名人だったという。
 安倍晴明と蘆屋道満が箱の中身を当てる、射覆(せきふ)勝負をした逸話は有名だ。

「ただし『今使っている』この射覆(せきふ)。種も仕掛けもある手品です」
「そうか、ならば見破ってみせよう!」

トリックを暴こうと悪戦苦闘しているうちに、ラッセルはあることに気づいた。

「そうか、影だな!」

 目を覆う布巾は強く縛っているわけではない。
 視線を下げれば床が見え、床には顔の前にかざした物の影が映る。法眼はそれを見て言い当てていたのだ。

「ははは、種が割れてしまえばどうということはない詐術だな。だが一杯食わされたぞ。たまにはこういう魔法以外の手品に興じるのも悪くない」
「ところで伯爵は最近医者から肝臓が悪いと言われていませんか」
「なぜそう思う?」
「財務局事務次官として日々会議が続くとどうしてもパンや干し肉などの簡単なもので済ましがちになります。このような乾燥食品ではビタミンやミネラルが不足して肝臓に負担がかかる」
「うむ」
「今の時期はカーナン地方の羊肉とチーズが晩餐会で多く饗されますが、これはどちらもコレステロールが高く肝臓に負担をかけます。しかし晩餐会も公務のひとつで外すわけにはいきません。普段の食事と酒の席の両方で肝臓に良くないものを口にしている」
「ふむ」
「そして肌に日焼けとは異なる黒ずみが見えます。白目の部分と爪も黄色がかっていて、これは肝臓に異常がある人の症状です。そして今あなたはお茶でも酒でもない生姜水(ジンジャーエール)を飲んでいる。肝臓を痛めているという自覚があるのでアルコールやカフェ
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