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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
遥かなる異境『日本』
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倒した鬼の他にも異形の怪物たちの骸が散乱していた。
 ここは東京新宿、花園神社。
 本来ならば聖域として存在し、大道芸や露店でにぎわう人々の憩いの場は異界化し、周辺地域に瘴気による害をおよぼしていた。
 法眼はその原因をつきとめ、祓うよう、退魔庁からの依頼を受けておもむいたのだ。
 魔物の群れは退治したが、いまだに瘴気が色濃く残っている。これではいつ魔物が実体化してもおかしくない。
 離れた所に置いておいたボストンバッグから漢字がビッシリと書かれた大型の方位磁石のような物を取り出す。
 風水羅盤。
 土地の龍脈を調べ、吉凶を占う道具だ。

「我、世の(ことわり)を知り、鬼を見、妖を聞き、万怪を照らす。急々如律令!」

 印を結び、呪を唱えると、中央の針がクルクルと回り、一点を示し止まる。

「なるほど。原因はあれだな」
 
 花園神社入り口。鳥居の額に書かれた「花園神社」の『花』の字。そのくさかんむりの部分がかすれて、ほとんど消えかかっている。

「花の園が化け園になったせいで言霊によってこの場の気が変生したか。神魔の境は紙一重。おかげで化け物の園となり、妖怪変化が大量に出現した……はて? 誰かが故意に字をもみ消したのかな? 言霊の理を利用して呪をかけたとしても、人の身で神社という聖域をこうも変えてしまうとは大した術者だ。まぁ、そこまで推測するのはこちらの仕事じゃないか」

 取り出した筆でくさかんむりが書かれ『化』が『花』の字になると、あたりに満ちていた瘴気がほとんど消え去った。
 ケイタイ電話を取り出して退魔庁の担当者に修祓が済んだことを伝える。

「お勤めご苦労様でした」

 現場の確認を終えた退魔庁の役人が鬼一に声をかける。

「さすがは十四代目鬼一法眼といったところですか。これだけの数の妖魔をたった一人で退治するとは、見事な腕前ですね」
「本気でそう思うのなら謝礼に色をつけてくれ」
「退魔庁は妖魔を祓える有能な呪術者をつねに求めています。正式に勤めるつもりはありませんか」
「俺なんぞいなくても退魔庁は安泰でしょう」
「いやいや、どこもかしこも慢性的な人手不足で悲鳴があがっていますよ。どうです? 冗談ではなく本気であなたを必要としているのですが。私が言うのもなんですが、親方日の丸。福利厚生など充実していますよ」
「もうしわけないが根がニートでしてね、宮仕えは性に合わんのですよ。『最低でも』週に五日出勤、日に八時間労働というのがもう無理。ニーチェも言っているでしょう『自分の一日の三分の二を自己のために持っていない者は奴隷である』て。それと毎日決まった時間に出勤するのも無理。俺は気まぐれなんです」
「ははは、それは筋金入りですね。わかりました無理強いはいたしません。ですが気が変わったらいつ
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