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レーヴァティン
第百七話 善政が招くものその三

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「否定出来ないな」
「そうだね、お酒を飲むにしてもね」
「沸騰させるまで火を通すことはな」
「ないね」
「普通はしない」
 幾ら熱消毒をしてもというのだ。
「鍋はまだわかるが」
「そこはね」
「まだな、俺もだ」
 英雄は言いつつまた飲んだ、飲んでいる酒は普通の酒で特に熱を通してもいない。それで味もごく普通のものだ。
「そこまではしない」
「生ものは絶対に食べなかったっていうし」
 奈央がここでまた言った。
「金沢生まれでもね」
「金沢は魚介類が有名だからな」
「いいお魚が沢山獲れて」
「刺身もな」
「食べると思うけれどね」
「最初はどうか知らないが病気に罹ってからだ」
 チフスに感染しかなり苦しんだらしい。
「そしてだ」
「そこまでになったのね」
「そうだ、他にも色々と逸話がある」
 泉鏡花という作家にはだ。
「犬も怖がっていたしな」
「それは狂犬病だね」
「それを恐れてな」
 これも実際のことだという。
「蛸等も食わなかった」
「蛸は美味しいのに」
「海老も蝦蛄もだ」
 こうしたものもというのだ。
「外見が気持ち悪いとな」
「食べなかったの」
「そうだった、そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「食生活は独特だった」
「何ていうかのう」
 ここまで聞いてだ、当季は牡蠣の塩焼きを食べつつ述べた。固い殻から出されて既に焼かれているそれは実に美味かった。
「徹底し過ぎていてぜよ」
「お前にしてはか」
「難儀な話ぜよ」
 泉鏡花のそれはというのだ。
「わしは海老も蝦蛄も大好きぜよ」
「蛸もだな」
「勿論ぜよ」
「好きだな」
「刺身にしても茹でても焼いても好きでぜよ」
 当季は笑いながら話した。
「特にたこ焼きはぜよ」
「大好物か」
「そうぜよ」
 まさにと言うのだった。
「あれは最高の食いもんの一つぜよ」
「確かにな。たこ焼きはな」
 英雄も飲みつつ同意して述べた。
「実に美味い」
「そうじゃのう」
「あれは幾らでも食える」
 それこそと言うのだった。
「俺はな」
「五十位はじゃな」
「食える、そこに酒があればな」
「余計にいいぜよ」
「特にビールだ」
 この酒がというのだ。
「いい」
「そうそう、わかっちょるのう」
「この世界にもたこ焼きがあるしな」
「しかもこの大坂が名物じゃ」
 この世界でもこのことは変わらない、やはり大坂といえばその名物の一つにたこ焼きが挙げられる。
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