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戦国異伝供書
第四十三話 関東のことその七

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「何といってもな」
「出陣はですな」
「少ないに越したことはない」
「左様ですな」
「しかしじゃ、外の戦に葛尾の城とじゃ」
「戦が続くとですか」
「攻め落とす城は他にもある」 
 葛尾城ばかりではないというのだ。
「村上家そして小笠原家の城は他にもあるからのう」
「だからですか」
「ここはじゃ」
「砥石城については」
「そしてその周りの城もな」
 そうした城達もというのだ。
「あえてな」
「この度の出陣では、ですか」
「あえて攻めずな」
「次の機会ですか」
「休ませるだけではない」
 兵達をというのだ。
「傷付いた兵も出る、その者達の手当もし兵糧も武具もじゃ」
「あらためてですか」
「戦になればどれも多く使う」
 晴信はこのことも言うのだった。
「だからな」
「そのどれもをですか」
「再び用意してじゃ」
「そしてですか」
「砥石城等を攻める」
 そうすると言うのだった。
「一気に攻めたいのはわしも同じ、しかしな」
「一気に攻めるとですか」
「危うい、とかく村上家は強い」
 晴信はこのことを念頭に置いていた、それで多田にも言うのだ。
「だからな」
「無理はしませぬか」
「まして何度も言うが」
「砥石の城は」
「堅固じゃ」
 それ故にというのだ。
「あの城を攻め落とそうと思うとな」
「厄介なので」
「それでじゃ」
「次の出陣ですか」
「暫し兵を休ませて」
「手当等もして」
「再び攻めるのじゃ」
 晴信は多田に穏やかな声で告げた。
「これでわかったな」
「はい」
 多田も確かな声で答えた、見れば太い眉に細面で大きな目の顔である。
「さすれば」
「まずはこれからの外での戦とな」
「葛葉の城ですな」
「その戦のことを考えるぞ」
「わかり申した」
「まずは敵が攻めぬうちにじゃ」
「川を渡る」
 多田はまた応えた。
「千曲の川を」
「そして布陣してな」
「戦に備えますな」
「敵が来ぬうちに」
 素早くというのだ。
「そうするぞ」
「まさに速きことですな」
「風の如くじゃ」
「そして静かなること」
「林の如くでな」
 速いだけでなく兵もその様に動かしてそうして気付かれぬ様にしてというのだ。
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