第七話
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僕はユウキくんが呼んでいることに気づいて、慌てて顔をユウキくんの方に向ける。ユウキくんの表情は、何とも形容し難いものだった。
「……あの女の子が気になるのか?」
「へっ?いや……まぁ、気になると言えば気になりますけど……」
突然そんな事を聞いてきたユウキくんに戸惑いつつも、やましい事は何も無いので、正直に答える。
「……どんな風に?」
しかし、ユウキくんは更に僕に詮索を入れてきた。どちらかと言うと、ユウキくんの方があの女の子を気にしているようにも思えた。
「……なんと言いますか……怖かった、です」
「……はぁ?」
僕は、やはり同じように正直に答えたが、ユウキくんはますます首を傾げるだけだった。どうやら、ユウキくんは何も感じていないらしい。
「怖いって……あの女の子……ルチアってのがか?」
「はい……」
「……いや、何がだよ。見た感じ、可愛らしい女の子だったが?」
そう、確かに彼女は、ドキッとしてしまうくらいには可愛らしい顔立ちをしていた。
しかし……いや、だからこそ感じた、多大なる違和感。
「……あの笑顔は、僕らと同じくらいの歳の女の子が浮かべていいものじゃないです」
「……?」
「あんな、完成度の高い作り笑いは」
十歳くらいの女の子が、あれ程までに綺麗な作り笑いを浮かべるなんて、どんな生活をしていたらできるようになるのか。
正直、想像すらしたくなかった。
「……作り笑い?あれがかぁ?」
「はい……多分、そうです。根拠は、無いですけど……」
「ねぇのかよ」
ジト目で僕のことを見つめてくるユウキくんから目を逸らしつつ、もう後ろ姿が見えなくなった女の子に思いを馳せる。
なぜ彼女は、あんな集団に居るのだろか?
なぜ彼女は、あんな風に笑うのだろうか?
僕は、ラルトスと同じくらい、あの女の子のことが気になっていた。
「…………はぁ。まあ、いいや。取り敢えず帰るぞ。もう少しでトウカシティだからな。ほら、行くぞ」
ユウキくんはそう言うと、僕の首根っこを掴んで、ズルズルと引っ張りながら歩き始めた。
「ちょ、ちょっと!?ユウキくん痛い!」
「なら歩け」
抗議したものの、冷たくあしらわれた僕は、大人しく歩き始めるのだった。
─自宅─
「ふぅむ……傷だらけのラルトス、か…………」
あれから、何とか昼頃にトウカシティにたどり着いた僕達は、また明日会う約束を交して、そのまま別れた。僕はそのママ自宅へと一直線に帰って行った。
家の扉を開くなり、母さんに抱きつかれてしまった時は、心配させてしまったのだと、少しだけ申し訳なくなってしまった。
そして、夜。二日前と同じように
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