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武悪
第一章

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               武悪
 主はこの時家臣の一人である太郎冠者に言っていた。
「武悪であるがもう我慢出来ん」
「だからですか」
「そうじゃ、お主が行ってじゃ」
 そのうえでというのだ。
「あ奴を成敗せよ」
「何と、武悪殿をですか」
「お主や二郎冠者も大概であるがあの者の不奉公は目に余る」
 それがもう我慢出来ないというのだ。
「だからじゃ」
「それがしに武悪殿を成敗せよというのですか」
「そうじゃ、わかったな」
 主は太郎冠者に強い声で述べた。
「では今すぐにじゃ」
「武悪殿のところに行き」
「そして成敗せよ、あ奴は武芸が出来るがお主はより強い」
 だからだというのだ。
「それでお主に言うのじゃ」
「あの方は確かに不奉公ですが心はよいので」
 それでとだ、太郎冠者は主にどうかという顔で答えた。
「暇を出す位でいいのでは」
「それで済ませというのか」
「そこまでせずとも」
「いや、わしは決めたのじゃ」
 主は頑固にだ、太郎冠者に言うのだった。
「だからじゃ」
「あの方をですか」
「成敗して参れ、そして成敗したらじゃ」
 この時はというのだ。
「わしに言え、首を持って来られたらじゃ」
「首をですか」
「うむ、持って参れ」
 主は太郎冠者に厳しい声で言ってだ、そのうえでだった。
 太郎冠者を送り出した、太郎冠者は仕方なく武悪のところに行ったが彼を討ちたくない気持ちで一杯だった。それでだ。
 武悪本人のところに行くと彼に主の命を話した。
「主から貴殿を討つ様に言われたが討ちたくない」
「よくそのことを伝えるな」
「当然じゃ、わしはお主を討ちたくないのじゃ」
 まさにそのものを言うのだった。
「だからここは逃げよ」
「そう言うか」
「首を持って来られたら持って来いと言われたが」 
 それでもというのだ。
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