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美声の魔術師
第四章

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「そして心も受け取ったからな」
「心というと」
「義姉さん達の心だ」
 六人の彼女達のそれがというのだ。
「妻としてあくまで慎む」
「それがあってなの」
「これからの魔術はなる、果物を増やすには女性の慎みの心を薬に変えて果物にかける必要があったが」
「姉さん達の慎みが」
「それを貰ったから」
「果物を増やせるのね」
「果物達は山の様に増やせる」
 その薬をかければというのだ。
「そして後は食べきれないなら」
「それはもう干して」
「食べられる様にすればいい、ではな」
「これからね」
「薬を作る」
 姉達の慎みをそれに変えるというのだ、そして早速だった。
 その薬を作ってそれで果物にかけると果物は実際に山の様に増えた、タバディクはその果物達を島の者達に配り食べきれないものは干させてそれで飢えを凌がせた。
 こうして凶作は救われたがだ、しかし。
 ここでだ、タバディクはピマカに話した。
「そなたが妻であり義姉さん達がいてくれて」
「それでなの」
「慎みがあるからな」
「それで島の人達は救われたの」
「私は私とそなただけでも幸せになれる」
 それは容易だという言葉だった。
「充分にな、しかしな」
「一家も。そして島全体となると」
「そうはいかない、そなたの姉上達はどなたも心確かな方々」
「そのお心がよい魔術を作ったのですね」
「左様、屋敷を大きくした竹を焼いたのはそなたの心だけのものであったが」
 それがというのだ。
「果物はな」
「姉さん達のお心もあって」
「出来たこと、魔術を強くするのも確かな心があってこそ」
「では心がないなら」
「幾ら魔術師が強くても大したものにはならない、だからな」
「これからもですね」
「確かな心でいよう」
 タバディクはピマカに微笑んで話した、そしてだった。
 彼自身も心を確かにする様にした、そうして何かあるとピマカや彼女の姉達やその夫や子供達に義父他にも様々な心ある人々の心を受け取り優れた魔術で家や人を栄えさせ島を救った、ハルマヘラ島に昔から伝わる物語である。


美声の魔術師   完


                  2018・10・14
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