プロローグ
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の間抜けな表情になってしまっていたが、すぐに首を横に振って、
「でっ、でもっ、わたしだって一体倒したんだからあ!」
と強がってみた。
初めて一人でヴァイスタを倒し消滅させたのだ。少しくらい威張ってもいいだろう。
というか、みんなはもともと強いんだ。こっちの一体をこそ、褒めてくれてもいいじゃないかあ。
「うん、お前も偉い偉い。よくやったよ」和咲の胸の声が聞こえたのか、和美がぽんぽんと頭を優しく叩いた、「でもハナキヤのケーキは忘れるなよ」
和咲ががくーっと大げさに項垂れると、周りから笑いが漏れた。
五人は集まり、輪になると、お互いの顔を確認し合った。
「みなさん、怪我はないですか?」
正香の問いに、全員こくりと頷いた。
「わたしは少しも戦ってないようなもんですからあ」
ぼそっと自虐に走る和咲。
「まあまあ。和咲ちゃんかなりよくなった。自信持ってええよ」
治奈が、背中を軽く叩いた。
「んじゃあ、こんな気持ち悪いところ、とっとと出ちまおうぜ!」
五人は輪を解き横に並ぶと、歩き出す。
淀んだ空気の、
色調の反転した、
見る物すべてがねじくれた空間の中を、
どろどろとした瘴気の渦巻く中を、
明るく、
きれいな空気、
きれいな町並みの、
きれいな青空の下を。
人々のざわめきの中を。
五人は、歩いていた。
みなの身体を原色鮮やかな布地の衣装や白金の防具が覆っていたはずであるが、それがいつの間にか学校の制服姿へと変わっていた。
「異空」から出たのである。
ここは自動車の行き交う大きな道路で、後ろを振り返ればきらきら輝く手賀沼が広がっている。
「たくさん動いたから腹減ったなあ。それじゃみなの衆、さっそく柏に食いにいくかあ!」
「柏にいくんなら、まず先に駅前に出来た雑貨店がいいなあ。決定!」
成葉が飛び跳ねるように右腕を振り上げた。
「キミたち切り替え早あっ!」
治奈がいまにも戻しそうな血色悪い顔で、元気満々といった和美と成葉を見ている。
でも、気持ち悪くも、なるよな。
和咲は思う。
あんな腐臭瘴気のまみれた中で、あんなのと戦っていたのだから。
その腐臭瘴気とは打って変わった綺麗な空気を吸いながら、和咲は思わず両腕を上げて、ううーんと大きく伸びをした。
「同じ空間の裏と表だというのに、こちらはこーんなにも爽やかだとはあ」
「うん。もうすぐ財布の中身も爽やかになるねえ」
和美が意地悪そうに唇を釣り上げた。
「そ、そうだったあ」
がくっ、とよろける滑稽な仕草に、四人は笑った。
ま、いいか。ケーキくらい。
と胸に呟きながら和咲も頭をかいて笑った。
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