プロローグ
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首が跳ね飛んでいた。
いや、ぎりぎり皮一枚で繋がっている状態だ。首から上がぬるりと背中側に垂れ下がって、そのまま動きが止まっていた。
「いまです、和咲さん!」
緑の戦闘服を着た少女が叫ぶ。緑という服の色よりも、第一印象として長い黒髪の方が目に入る、上品そうな雰囲気を全身から発している少女である。手にした武器は雰囲気裏腹に鎖鎌であるが、そこを差し引いても。
「分かった正香ちゃん。……っとなんだっけ、そうだ……イヒベルデベシュテレン、ゲーナックヘッレ!」
和咲と呼ばれた赤い戦闘服の少女が呪文のようなものを唱えると、ぼおっと自身の右手が薄青く光り輝いた。
「生まれてきた世界へ、帰れえ!」
薄青く輝くその手のひらを、ゆっくりと近づけ、首のもげかけた白い怪物の腹部へと軽く押し当てた。
ちっ、ちち、ちっ
一体どこから発声しているのか、白い怪物からそんな音が漏れる。舌打ちのような、皮膚が急激に乾燥して縮んでいるような。
と、次の瞬間である。
白い粘液質の怪物が、急に動き出したのは。
だがそれは、なんとも異様な光景であった。
自分の意思で四肢を動かしたというようなものではなく、ビデオの逆再生をコマ送りで見ているかのように、はねてもげかけた首が戻っていくのである。
剣による一撃を受ける前の状態へと完全に戻っていた。
異様なのは、それだけではない。
顔に当たる部分、先ほどまでは完全なのっぺらぼうだったのが、幼児のような、または魚のようなというべきか、小さな口が出来ていたのである。
その口が、ニイーッと微笑んだのである。
ゼリーのようにぬるぬるぷるぷるしていた全身は、いつしか完全に乾燥して、頭頂から下へ下へ、さらさらと光る粉になって風に溶けた。
和咲は、剣を地に突き立てて、はあはあと息を切らせ肩を上下させている。
長槍を構えた、紫の戦闘服を着た少女が、しかめっ面をしながら、
「この、おちょぼ口でニヤリ笑うの、いつまでも慣れんなあ」
「治奈はビビリだからな。……しかし和咲、お前よく一人で、ヴァイスタを仕留めたじゃねえか。合宿でかなり実力をつけやがったな」
両手にナイフを持った青い戦闘服の少女、和美の乱暴な言葉使いに褒められた和咲は、
「えー、そうかなあ?」
後ろ頭をかきながら、顔の筋肉をすっかり緩めて恥ずかしそうにえへへと笑った。
だが次の瞬間、その笑みが凍りついていた。
目が驚きに見開かれていた。
眼前数センチのところで、別のヴァイスタから伸びる腕の先端に生える無数の鋭い歯が、ガチガチと獰猛に打ち鳴らされていたのである。
青い戦闘服の少女、和美が、両手のナイフをクロスさせて、
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