プロローグ
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ネガフィルムのように色調の反転した、そして見える物すべてがぐにゃぐにゃと歪んだ、そんな薄気味悪い景色の中に、五つの影が色鮮やかに浮かび上がり舞っている。
よく見るとその周囲には、十ほどの真っ白な影がうねうねと不気味に動いている。
どんより暗い中でむしろ白い方が目立つはずなのに反対なのは、それが完全にこの渦巻く瘴気に溶け込んでいるからであろうか。人のような人でないような、不気味な全身から吹き出す生気や温度が異様だからであろうか。
戦っている。
現在、色鮮やかな五体の人影と、この真っ白な者(物?)とが。
ふうんっ
という音とともに、ぬめぬめ真っ白な身体からなんの予備動作もなく腕が突然突き出された。
「と、あぶねっ!」
狙われた青い衣装の少女が、びっくりした顔で叫びながら紙一重でかわしていた。
「和美ちゃん! 大丈夫じゃった?」
「ったりめえだろ。こんくらい」
和美と呼ばれた少女は、心配する仲間の声にちょっと乱暴な言葉で強がってみせた。
色鮮やかな五つの影は、みな、十代前半と思われる顔立ちの少女たちであった。
それぞれ赤、紫、青、緑、黄、の服を着て、さらに脛と二の腕と胸には白金の防具。その防具のいたるところには、それぞれのカラーに合わせた細やかな装飾が施されている。
下半身は黒いスパッツ状で、靴はそれぞれの色に合わせた軽そうなスニーカーのような物。一目で機動性や格闘性を重視した戦闘服であることが分かる出で立ちである。
手にはそれぞれ、剣、槍、短刀、鎖鎌、広刃の刀。
彼女たちと対峙する白い影であるが、これはどこをどう見ても人外どころか一般的な生物ですらなかった。
四肢や首など全体のシルエットとしては、ひょろりとした人型ではある。しかしそのバランスは著しくいびつで、全身は真っ白で粘液に包まれて光っており、ゼリーのように細かくぷるぷる震えている。
それだけでも神とは別の何者かが作り上げた造形としか思えないというのに、顔を見れば目も口も鼻も耳もなんにもないのっぺらぼう。
そんな奇怪な、化物のような生物と、五人の少女たちは戦っていたのである。
「うわ!」
赤い戦闘服の少女は、小さく悲鳴を上げながら、白い生物からぶんと突き出される腕を、ぎりぎりでかわしていた。
伸びた腕の先端、人間でいう拳のある部分には、すっと線が入り裂けており、そこには無数の小さな歯が生えておりガチガチガチガチと凶暴に打ち鳴らされている。
もしも紙一重で避けていなければ、身体の一部を噛みちぎられていたかも知れない。
「このお!」
赤い戦闘服の少女が、両手に持っている剣を斜め下からすくい上げるように力一杯に振るうと、ぶちゅりと気持ちの悪い音がして、白い怪物の
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ