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二十年
第一章

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               二十年
 二十年、言葉にすると一言だった。
 だがフランス国王ルイ十五世は玉座からその整った顔で言った。
「長いと思うか、二十年は」
「やはり長いかと」
「一年も結構なものです」
「それが二十年になるとです」
「そうなるかと」 
 傍にいた廷臣達が王に答えた。
「そう思いますが」
「どういったことに対する二十年かが大事ですが」
「やはり長いと思います」
「基本的に」
「そうだな、余もだ」
 王は流麗なその目を曇らせて述べた、頭には白い鬘を被っており服も白いもので全体的に白い印象である。
「長いと思う、だが」
「だが?」
「だがといいますと」
「その中にいるとあっという間にも思える」
 その様にもというのだ。
「思える」
「そうなのですか」
「長い様で、ですか」
「短い」
「そうも思われますか」
「振り返るとだ」
 実際にだった、王はこの時過去を振り返って言うのだった。
「あっという間だった、長い筈だがな」
「それがですね」
「短いというのですね」
「振り替えられると」
「そうなのですね」
「どうもな、それでだが」
 王は廷臣達にあらためて話した。
「今から行こう」
「今日もですね」
「そうされますね」
「そうする、今からな」
 こう言ってだった、王は自分が今いるベルサイユ宮殿の一室に向かった。そこには着飾った面長で楚々とした顔立ちのほっそりとした身体の女がいた。
 髪の毛は気品よく整え顔は化粧で整った顔をさらに見栄えよくさせている。だが化粧のノリは悪く緑のドレスから見える肌は木の皮の様になっている。
 その美女が王に一礼して述べた。
「陛下、今日も来て頂けるとは」
「よい、それで気分はどうだ」
「今のですか」
「そうだ、どうか」
「はい、今日もです」 
 美女は王に微笑んで答えた。
「至って気分よく」
「それでか」
「楽しく過ごしています」
「ならよい、ではだ」
「はい、これからですね」
「寝るのだ」
「ですが」
 王の前でとだ、美女は恐縮して述べた。
「それは」
「余が言ったのだ」
 王は美女に微笑んで告げた。
「だからだ」
「寝ていいのですね」
「そうだ、そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「寝てな」
「そのうえで、ですね」
「話をしよう、だが」
 王は美女にさらに話した。
「話す元気がないならな」
「あります」
「いや、無理をすることはない」
 決して、という返事だった。
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