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シベリアンハイキング
タルクセナート
亡骸の力
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 ここにきて、声の主が袋に収まった例の狼の声であることにユスフは気が付いた。声は続けて語り掛ける。

「この者には何ら害は加えてない。しかしわが身を詮索されても困る。故に我が力でもって寝てもらっている。起こしても良いものか?」

 誠に奇妙な話ではあるが、この亡骸はその力でもって、人の睡眠すら操ることができるということなのだろうか。ユスフは一応そのように理解した。そして注意深くその倒れこんでいるドミトリの手下の覆面で覆われた顔を覗き込んだ。よく見るとそれは先ほどユスフを陰ながら着けてきて、仲間に諫められた例のベスリムという者である。恐らく仲間に見つかり、その場では一旦あきらめたが、それでも怪しいと思ったか、後からユスフの部屋に忍び込み、荷物を物色したといったところか。ユスフは狼の亡骸に向かって、この者を起こしてほしい旨を伝えた。

「承知した。」

すると荷物に倒れこんでいた手下が目を覚ました。そして咄嗟に部屋の入口に佇むユスフを認めると、訓練された者のある種の条件反射なのだろう、すぐさま腰に差した短刀を抜いてユスフに相対した。

「貴様、何をした!」

叫ぶ手下にユスフは一旦両手を上げ、そして次にまぁまぁ落ち着けと制す様に両手を前に出した。

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