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ある晴れた日に
373部分:天使の様なその十八

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天使の様なその十八

「最初からね」
「最初からか」
「そうよ。だから一緒にいるんじゃないの?」
 それだからだというのであった。
「私達は。そうじゃないの」
「絆はその時からか」
「だから。深まったのだと思うわ」
 未晴が言うにはこうだった。その深まったということを話すのであった。
「私達はね」
「そうなのか」
 正道もそれに頷きだしたのだった。
「俺達の絆はできたんじゃなくて深くなったんだな」
「私はそう思うわ。それでね」
「ああ」
「今日はこれで電車に乗って終わりだけれど」
 話は今度は帰りの話になった。何もかもが終わってしまえば最後はそれしかない、だからこそであった。
「これからも一緒にいましょう」
「ああ、それはな」
 そのことにも頷く正道だった。
「一緒にな。いような」
「ずっとね」
 未晴は顔を見上げて正道に言ってきた。
「ずっと一緒にいましょう、二人で」
「ああ」
 そして正道はこの言葉にも頷いたのだった。
「本当にな」
「何があっても」
 未晴は本気だった。
「離れないでいましょう」
「離れたくない」
 正道もまたその心になっていた。
「ずっとな」
「ええ。けれど今は」
 未晴は言った。
「帰りましょう」
「そうだな。今はな」
 もう夜だった。現実のことも考える。そうして今二人で帰るのだった。
 その時上を見上げる。そこにあるのは満月した。白い光を放つ満月だった。
 その満月を見ながら。二人はまた話すのだった。
「月ね」
「ああ。白いな」
「白いっていうよりは」
 その輝きを見て。未晴はここでも言葉を出した。
「銀色ね」
「銀色か」
「ええ。白銀の光ね」
 それはまさにその光であった。白というよりは白銀の。そうした光だった。
 その光を見ながら二人はゆっくりと帰り道についた。二人並んで。
 これが二人の絆が確かな深まりを得た時だった。この絆が断たれることはおろか危うくなることもない。この時は確かにそう思っていたのであった。


天使の様な   完


                 2009・6・21

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