第百五話 大坂からその七
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「奈良の都程はね」
「いないか」
「そうだろうね」
「そこまで少ないか」
「しかもその吉野でね」
桜子は今言ったこの場所のことからさらに話した。
「入り口でそこからね」
「深いか」
「紀伊までずっと山と木ばかりだよ」
「そうなっているか」
「それで紀伊もね」
この国もというのだ。
「海岸までね」
「山と木ばかりだな」
「そうなっているんだよ、村も少ないよ」
「人がいないか、いや」
ここでだ、英雄はその目を光らせて言った。
「いることはいるな」
「知ってるんだね」
「平地の民は少ないが」
「ああ、山の民がね」
「いるな」
「その人達がね」
「あの辺りもであります」
山伏の峰夫が言ってきた。
「修験道があり」
「それでだな」
「山伏達もいてであります」
そしてというのだ。
「その山の民達もであります」
「いるな」
「そうであります、彼等は」
その山の民達はというのだ。
「独自の暮らしをしているであります」
「連中に詳しいか」
「はい」
その通りだとだ、峰夫は英雄に答えた。
「これまでの修行も通じて」
「そうか、ならだ」
「大和の南、そして紀伊の山々の方は」
「少し頼めるか」
自分達の勢力圏に組み込むことについてだ、英雄は峰夫に言った。
「ここは」
「承知したであります」
これが峰夫の返事だった。
「それでは」
「すぐにだ」
「あちらの山伏達のところに行って」
そしてというのだ。
「話をしてくるであります」
「ではな、南はこれでいいが」
そしてとだ、英雄はさらに言った。
「北だな」
「やはり大事はそっちだね」
「そうだ、北の豊かな田畑と街をな」
そのどれもとだ、英雄は桜子に答えた。
「手に入れていくぞ」
「そうしていこうね」
「まずはな」
こう言ってだ、英雄は次は大和としてそちらへの進出を進めていった。大和もこれといってであった。
強い国人はおらず寺社勢力もだった。
興福寺はあるが数は多けれどもそれぞれ小さくてだった。彼等は英雄達の使者の言葉にあっさり従ってだった。
次々に降っていった、だが興福寺だけはだった。
「どうしてもか」
「降らないです」
紅葉が答えた。
「あちらだけは」
「そうか、ならな」
「戦ですか」
「仕方がない」
降らないならとだ、英雄は決断を話した。
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