第五章
[8]前話
「だからだ」
「こうしたことはですか」
「別にいいだろう」
「妖怪なら」
「それ以外のことはしていないしな」
「まあこれ位はいいだろうと」
そう考えてとだ、神父はまた言った。
「私も思いまして」
「怒られないですか」
「そうして一緒に暮らしています」
「ははは、よい者だぞ」
妖怪は朝美達に神父を手で指し示して笑って話した。
「まことに」
「そうなのですね」
「わしにも偏見はないしな」
妖怪である自分にもというのだ。
「普通はあるからな」
「心です」
神父は微笑み言った。
「大事なものは」
「こう言ってな」
妖怪は神父の言葉を受けて朝美と晃に話した。
「わしと同居しておる」
「神は来る者を拒まれません」
神父はこうも言った。
「ですから」
「こう言ってな」
「神を信じられるのなら」
「わしは基本仏教だがな」
「神は寛容です」
「こうした神父だからわしも好きだ、そしてな」
ここでだ、こうも言った妖怪だった。朝美を見て。
「あんたいい顔をしているな」
「そうですか?」
「うむ、随分とな」
「そうだったらいいですが」
「その顔は旦那さんと一緒だからか」
「はい、いい人です」
晃に顔を向けてだ、朝美は妖怪に答えた。
「かけがえのない」
「そうか、ではな」
「それならですね」
「旦那さんを大事にすることだ」
「いい人だからですね」
「そうだ、あんたをいい顔にしてくれている」
だからだというのだ。
「それでな」
「これからもですね」
「大事にするんだ、いいのう」
「そうさせてもらいます」
朝美は妖怪に笑顔で答えた、そうした話をしてだった。
朝美は妖怪そして神父と別れた。そうしてから共にいる晃に言った。
「妖怪でも人でも心ね」
「そうだね」
晃は妻のその言葉に頷いて答えた。
「心がどうかだね」
「それ次第ね。いい人と悪い人がいて」
「妖怪も同じだね」
「そうね、それでいい人いい妖怪なら」
「幸せに過ごせて」
「幸せに生きられる」
「そして幸せに死ねて悼んでもらえる」
「そういうことね」
朝美は今の夫の言葉に微笑んで頷いた、そしてだった。
彼と共に二人で家に帰った、碌でもない人間を見送った後は温かい妖怪を知ることが出来た。今は彼女の心も温かかった。
大阪のうわん 完
2019・5・29
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