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大阪のうわん
第一章
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               大阪のうわん
 田中朝美は一度結婚した、そして今の夫は二人目だ。先日最初の夫である徳光和博が死んだと聞かされて今の夫の晃と共に大阪市天王寺区のある寺の方に向かって彼と一緒に歩いている。
 目は小さく垂れ目である。優しい光が二重のそこから出ている。茶色の長い髪の毛を後ろで編んでまとめていて唇は小さく微笑んだ形である。顔はやや面長で顎は小さい。白く楚々とした顔立ちで眉は細く奇麗な形である。
 黒の喪服から九十を超える胸が目立つ。その彼女が今少し溜息をついていた。
「人の一生はね」
「わからないね」
 今の夫の晃が応えた、彼も喪服である。百六十四位の背丈の朝美より八センチ位高く眼鏡をかけた穏やかな顔で黒髪をセンターで分けている。細面で穏やかな顔である。
「正直言って」
「そうよね」
「一昨日まで元気だったらしのに」
「そうみたいね」
「それが喧嘩でね」
「ヤクザ屋さんに刺されてなんて」
「いや、あの人らしいかな」
 晃は彼についてこうも言った。
「正直言って」
「ヤクザ屋さんに刺されて死ぬって」
「すぐに誰か罵ったり罵倒したりね」
「会社でもよね」
「評判の悪い人でね」
「あなた元々あの人の取引先だったのよね」
「仕事も全然出来なくて」
 それでというのだ。
「会社でも評判が悪くて酒癖もね」
「最悪だったわ」
 朝美も一緒に暮らしていたのでわかる、このことは。
「正直言って」
「しかも金遣いも悪くてギャンブルも好きでね」
「女癖も悪かったわ」
「いいところがなかったね」
「そんな人で」
 朝美にしてもだったのだ。
「離婚したわ」
「離婚して正解だったよ」
「それで一年程立って紹介されたのが」
 その人がだったのだ。
「あなただったのよね」
「人生ってわからないね」
「そうよね、あの人の会社の取引先の会社の人だったって」
「そうだね、取引先といっても」
「あの人は私鉄に務めていて」
 日本屈指の路面面積を誇っている企業である。
「あなたはね」
「八条鉄道で」
「同じ鉄道会社で」
「縁だね、それも」
「そうよね」
「あそこの会社にあの人コネで入ったんだよね」
「ええ、けれどね」
 それで入社したがとだ、朝美は述べた。
「ああした人だったから」
「何時クビになるかわからなかったんだ」
「コネで入っても」
 それでもというのだ。
「だから私もお見合いで結婚したけれど」
「すぐにだね」
「私の顔に痣があるの見てお父さんとお母さんも怒って」
「結婚してすぐに別居してだったね」
「離婚したわ。そしてあの人は」
「離婚しても行いあらたまらなくてね」
「一昨日の夜居酒屋で酔ってヤクザ屋さんと喧嘩して」
 そしてだったのだ。
「刺さ
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