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ある晴れた日に
363部分:天使の様なその八
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天使の様なその八

「あんだけか、ここから見たら」
「案外ちっぽけなもんなんだな」
「何だってそうなんだろうね」
 竹山が座ったまま言ってきたのだった。
「何でもさ。離れてみれば小さいんだよ」
「じゃあ俺達もか」
「ちっぽけなもんなんだな」
「真下見てみる?」
 竹山は野茂と坂上に今度はこう告げるのだった。
「観覧車の真下。どう?」
「んっ、何か人が一杯見えるけれどよ」
「ここでゴミのようだって言ったら駄目だよな」
「それはちょっとね」
 坂上のゴミのようだという言葉には苦笑いになる竹山だった。
「あれじゃない。天空の城の」
「だよな。やっぱり止めておくか」
「かなり悲惨な最期迎えるかも知れないよ」
 このゴミのようだという言葉は名台詞である。しかしそれを言った本人の結末は実に悲惨なものであった。悲惨度で言えば時計にプチッ、と潰されることに匹敵する。
「だからあまりお勧めできないよ」
「そうか、やっぱりな」
「それはな」
 坂上だけでなく野茂もその言葉に頷いた。
「まあ俺もそれはわかってるしな」
「だよなあ。あの禿みたいにはなりたくないしな」
「禿なんだ」
「いや、実際禿てただろ?あいつ」
 野茂はそこをかなり言うのだった。
「額がよ。もうかなりよ」
「確かにね。それは事実だね」
 このことは竹山も否定しなかった。
「あのままいったら将軍になる頃にはもうね」
「立派な禿だよな」
 野茂はまた禿について言うのだった。
「前から砂漠化していってよ」
「砂漠化かよ」
 坪本は今の野茂の言葉に微妙な顔になった。
「禿はよ」
「だろ?毛が抜けてそのうえでつるつるになってくんだからよ」
 何故か禿ということにやけにこだわる野茂だった。
「だったらそれじゃねえか」
「そうなるのかよ」
「何かよ、その禿にしてもよ」
 坂上は真下を見続けていた。竹山のその言葉通りにだ。
「ここから見たら全然目立たないよな」
「僕みたいに太っている人なんてもっとわからないよね」
「ああ、本当にな」
 坂上は相変わらず真下を見ている。そうしてそのうえで竹山に話している。
「わからないな、これじゃあな」
「そういうものなんだ。何でも遠くから見たら本当に小さなものなんだ」
「小さいのかよ」
「うん、見たらわかるよね」
 竹山もまた自分の席から真下を見ていた。そこからもやはり無数の米粒よりも小さい、そんな人達が大勢いたのであった。数え切れない程に。
「そして僕達もそうなんだよ」
「だよなあ、それってな」
「俺達もな」
 三人は今の竹山の言葉に少しばかり納得したような顔になった。
「そうなるよな、あそこにいればな」
「学校にいてここから見られればやっぱりそうだよな」
「なあ」
 
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