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ある晴れた日に
362部分:天使の様なその七

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天使の様なその七

「見えないんだぜ、こっちは」
「それでもかよ」
「うん、それでもね」
 こう三人に言うのである。
「それならそれで」
「それで?」
「どうするんだよ」
「別のものを見ようよ」
 やはりその声は落ち着いたものであった。
「別のものをね。いいかな」
「別のもの?」
「何だよ、それ」
「だから。外をね」
 彼が言う別のものとはそれであった。
「見よう。それでどうかな」
「外か」
「外の景色をかよ」
「うん、見ない?」
 また言うのだった。
「それをね。どうかな」
「どうかなってよ」
「それじゃあここにいる意味がよ」
「なあ」
 彼の提案に苦い顔になる三人だった。
「意味がないよな」
「折角乗ったのにな」
「だよなあ」
「見ないとな」
「だから見るんじゃない」
 また言葉を返してきた竹山だった。
「そうでしょう?だから見るんじゃない」
「って景色をかよ」
「それをか」
「うん、見ようよ」
 また提案してみせたのである。
「外をね。それでどう?」
「どうって言われてもよ」
「外なんか見てもよ」
「いや」
 しかしここで。坪本が言うのだった。
「結構いいかも知れないぜ」
「んっ!?そうなのか」
「そんなにいいのかよ」
 だが野茂と坂上は彼の言葉にもまずは疑問符で応えたのだった。
「外見たって何もないだろ?」
「家とかビルとが見えるだけだろ」
「いや、そうでもないぜ」
 見ればもう坪本は竹山と同じ笑顔でその景色を見ていた。
「これが中々な」
「ああ、そういえば結構な」
「いい感じかもな」
 後の二人もここで外を見てふと気付いたのだった。
「あれ学校だよな」
「ああ、俺達の学校だよな、あれ」
 そして自分達が通っているその学校も目に入ったのだった。
「何か殆ど点になってるよな」
「そうだよな」
 確かに学校はもう点であった。かろうじて見分けがつく程度だった。三人は観覧車の中で立ってそのうえで見ながら話をしているのだ。
「こうして見ると本当に小さいよな」
「中にいたら結構広いのにな」
「八条学園だってよ。見ろよ」
 坪本は二人に八条学園も指差してみせたのだった。
「小さいぜ、あんなのだぜ」
「本当だな。あんなに小さいのかよ」
「馬鹿でかい学校なのにな」
 二人はその八条学園も見て話す。それもやはり殆ど点だった。校舎から微かに見える学校の時計塔からそれを区別できたのである。

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