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イヌイットの宝
第五章
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「ですから」
「私等に渡してくれるか」
「そしてこの宝は時として私が自分の手に戻し」
「また手に入れろっていうんやな」
「そうです、必死に探して努力して」
 女神はエリカに微笑んで話してだった、彼女にその宝を手渡すと何処かへと姿を消した。エリカは宝を受け取った後でエミリーと共にだった。
 二人で潜水艇に乗り込んでノームの街に戻りそうして市長にこれまでの二人の冒険と女神、そして宝のことを全て話した。市長はその話を聞くとその話を全て記録させた。こうして一度消えたイヌイットの宝の話は再び伝えられる様になった。
 エリカとエミリーは市長からギルドの依頼を適えたことに対する感謝の言葉と報酬を受けた、この時の二人は冒険者だった。
 エリカは全てが終わるとエミリーをノームのある店に案内した、そこはアラスカの料理を出してくれる店で。
 スモークドサーモンにサーモンのムニエル、トナカイのステーキにシチューそしてザワークラフトや蒲公英を入れたサラダを注文した。酒は氷で出来たグラスの中にブランデーを入れて飲んだ。とかく寒いので酒は強いものだった。
 鮭やトナカイそしてサラダを食べてブランデーも楽しむがその中でだった、エリカの手にあるものが宿った。ここでエリカは心の中で自分に語り掛けてくる言葉に言われた。
「私の三番目の神具でな」
「それでやな」
「そや、アガーテの衣や」
「魔弾の射手のヒロインやな」
 主人公マックスの婚約者で彼のことを愛し案じ続ける清らかな少女である。
「あのヒロインの着ていた服か」
「主人公をひたすら愛して加護を祈ってただけあってな」
「かなりの防御力があるか」
「それで特に呪い属性の攻撃や罠にや」
 そういったものにというのだ。
「強い」
「そういった神具か」
「そや、そしてな」
 心の中で言葉はエリカにさらに話してくる、エリカはその言葉をエミリーにさらに話した。
「神託を適えて私自身もな」
「強なかったか」
「全体的に一回りな」
 ブランデーを一口飲んで答えた、酒が一気に身体の中に回って熱くなる。
「そうなったわ」
「それは何よりやな」
「ほんまにな、それでな」
 今度はスモークドサーモンを食べる、こちらも美味い。
「ここのお酒とご馳走飲んで食べて」
「楽しんでからやな」
「次の場所行こうな、この世界を救う為に」
 エリカはこうも言った、そしてだった。 
 スナイパーとしてだけでなくこの世界を救う星の者の一人として次に行く場所を見据えていた。赤目族として目から放たれる光を防ぐ為に今はサングラスをかけている。だが今はそのサングラス越しに次に行く場所を見据えていた。酒に馳走を楽しんでいても既に心の足はそちらに向いていた。


イヌイットの宝   完


           
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