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ある晴れた日に
360部分:天使の様なその五

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天使の様なその五

「大変どころじゃないわよね」
「確かにな。そんなふうだったらな」
「ええ。まさかって思うけれど」
「女の子も狙うとなればな」
 正道の顔は本気で歪んだ。
「恐ろしいことだからな」
「そもそも動物達を殺すなんて」
 未晴はこのことでもう顔を曇らせていた。
「どうなの?それって」
「花を切ったりな」
「人間じゃないわ」
 未晴にしては珍しい言葉だった。曇らせたものは顔だけではなかったのだ。
「もうね」
「そうだな。人間じゃないな」
 正道も未晴のその言葉に頷いたのだった。
「もうな」
「そうよね。やっぱり人間じゃないわ」
 未晴はまたこのことを言った。
「そんなことするのはね」
「人間じゃない」
 正道はまた言った。
「本当にな」
「本当にいたらって思うだけでぞっとするわ」
 未晴の曇った声は続く。
「それも街の中に普通にいたりとかって」
「有り得ないとは言い切れない」
 これこそが最も怖いことであった。
「有り得ないとはな」
「そうなのね」
「ああ。ひょっとしたらな」
 やはりここでも断定は避けていた。
「いるかも知れないしいないかも知れない」
「何かそれ言ってたら」
「怖くなるか?」
「ええ」
 実際に未晴の顔は怯えたものになっていた。
「そう考えていくだけで」
「そうだな。あって欲しくない」
「絶対によ」
 未晴の言葉が強くもなった。
「そんなの。絶対に」
「俺もそう思う。それはな」
「そうよね、やっぱり」
「まあこの話はこれでな」
 話を終わらせてきたのだった。
「終わるか。それで」
「それで?」
「この観覧車だけれどな」
 話をそこに移したのだった。今彼等が乗っているその観覧車にだ。
「本当に長いな」
「そうね。もう結構乗ってるけれど」
 未晴も彼の言葉を受けて少し表情を明るくさせられるようになっていた。
「それでも。まだだから」
「頂上にも着いてないな」
「そうなのよね」
 困ったような微笑みもここで戻った。
「ここって。大きいから」
「大きい観覧車ってのが売りだからな」
「ええ。だからね」
 また言う未晴だった。
「気長に楽しみましょう」
「気長か」
「そう、気長にね」
 また答える未晴だった。
「楽しみましょう、ゆっくりとね」
「そうだな。だったら」
「だったら?」
「外でも見るか」
 彼の提案はこれであった。
「このまま色々なもの見ていくか。それでどうだ?」
「そうね」
 未晴は彼の提案に対してまず一呼吸置いた。そうしてそれからゆっくりと答えた。

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