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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
第一部
第53話
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「起床! 点呼を取りま……じゃなくて、点呼を取る」
朝。
第一魔法刑務所一舎に、看守の声が響き渡る。
「四番! ……はいいでしょう」
「だから、僕の事を呼べと何度言ったら分かる??」
「朝から鍛錬してるのが悪い! 点呼の時に呼ばれたいなら脱獄しない?? それに、何回も言われた覚えはありませんよ!」
「それはそうだな……よし、此れからは毎回呼べ。看守」
「看守に命令しないで、囚人」
「八十九番!」
「はぁい?? おっはよー! 看守さんっ??」
「おはようございます、ハクさん。朝から元気ですね」
「わぁい! 名前で呼んでもらえたぁ?? あ、でも敬語は禁止だよ!」
「あ、そうでし……じゃなくて、そうだった。慣れてた口調を変えるのは大変……」
「……九百四番」
「なんでオレの時だけ暗い??」
「だって、グレースなんだもん。なんでマフィアに居るはずなのに、第一魔法刑務所の一舎一房に、囚人として居るのさ?」
「だって、琴葉たんが居るんだもん! 琴葉たんが居るところにオレあり?? ってね」
「変態。ストーカー」
「酷くない?」
「最後、は……レンさん!」
「……俺を称えてくれ。俺はマフィア幹部黒華琴葉の過去の罪を、裁判で死刑にされないくらいまで、マフィア首領に擦りつけられた結果、懲役一万五千年を言い渡された勇者なんだ」
「わぁ、お疲れ様です」
「おい、それはおかしい! 俺は一応琴葉の主なんだ!」
「はい! 何時も大量の魔力を頂いております。その御礼に何時も“御奉仕しましょうか”と尋ねて居ますが? その誘いを受けないのが悪いんです」
「……その言い方、遠回しにしたいって言ってるだろ」
「さぁ? どっちでしょう。因みに前の主様には週三位のペースでやってましたけど」
「はぁ?? それが普通なの???? だったら今夜にでも……」
「「待ちやがれ変態」」
「御前等酷いな! 一応、常にぶっ倒れるギリギリ位まで魔力を吸われてるんだぞ! それに、誘ってんのは向こうで……」
「でもそれを受けないんだったらそれで良いだろう?? 何をすればいいのかも分からないであろう童貞め??」
「ハッ、それは違うなシン。最近、夜にマフィア首領の黒華湊氏に指導を受けているのだ!」
「首領に頼らなくても、オレが教えてあげるのにぃ?? 琴葉ちゃんを二人で攻めながらね??」
「グレースが琴葉に触れるのはマジで許さん」
「レンくん、随分元気になったね! 前より明るいよ!」
「ここに純粋な天使が居た」
「ん? どうしたの、レンくん」
「なんでもない」
???一人の天使(仮)と、一人の眼鏡と、一人の監視役と、一人の御主人様は囚人となって、四人揃って第一魔法刑務所一舎に賑わいを齎す。
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