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ちょっと変わったお姉さんと少年のお話
ちょっと変わったお姉さんが少年と旅行に行くお話
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かの名家か大富豪の令嬢なんだ)


「ゆーさん、家ではすっごくズボラで、だらしなくて、僕がお世話ばかりしてるけど、実はお嬢……」
「みなまで言うな。全ては研究のためだ」
「研究?」
「今日回った先にあった非公開の資料を見る為には、私ひとりの力だけではどうしようもないのでな。私だって好きこのんでああいう扱いを望んでいるわけではない。普段の私を見ていれば分かるだろうに」
「はあ」
「実家から『話を付ける』と、……ああいう結果になるんだ」
「はあ」

 彼女の言葉に付いていけない少年が生返事を繰り返す。

「ああそうだ、もう1つ注意事項がある」
「はい」

 女は、座卓から身を乗り出し、少年と視線をはっきり合わせ、小声で言った。

「君は私の弟としてこの宿を予約している。ここでは、人前では私の事を『お姉さん』と呼べ」
「え”?!」
「君の苗字は私と同じでチェックインしてあるからな、くれぐれも頼んだぞ」
「は……」

 口をぽかーんと開ける少年を尻目に、静かに立ち上がり、浴衣に着替えようとするところを、一度振り返った。

「そうでもしなければ、若い女と少年の2人組が旅館に泊まれると思うか?」
「あの、姉弟って時点で不自然……」
「細かいことは気にするな、そういうことにしてある。旅館も特に何も言ってこなかった」
「……そういうこと……?」
「ちょっと遅くなってしまったからな、風呂は後だ、もうすぐ料理が来るから君も浴衣に着替えろ」
「あ、はい」

 少年が首を傾げながら、着替え始めた女から目を背け立ち上がり、自分の浴衣を持って部屋の隅に向かった。


……。
「こ、この料理、凄い、で……す」

 座卓いっぱいに並べられた料理を何度も見返す少年。

「さっきも同じことを言わなかったか?」
「だって、これ」
「たまにはいいだろう、じっくり味わいたまえ」
「は、はい」

 ぼたん鍋、地鶏の霜降り、天然アユの塩焼き……丁寧に面取り、隠し包丁されたほっこりした煮物や、山の幸の和え物、自然薯のかかった手打ち蕎麦、などなど。

「こんな山の中で魚の刺身なんぞ食べても仕様もないからな。……ぼたん鍋は君のために用意した」
「え?」
「本当は鯉が名物なのだが少年の口に合うかどうか分からなくてな。それに夜もあるだろう。精の付く、温まるものが良かろうと思って」

 女がくっと杯を傾けると、それを少年の前に差し出し、お酌を求める。

「あ、はい。……明日があるんですから、飲み過ぎないで下さいね?」
「その前に今夜がある。たっぷり食べておくんだぞ」

 女が昼間の涼し気な微笑とは違う、淫らさを湛えた笑みをにーっと向けた。
 徳利から杯に酒を注いでいた少年が、びくっと震える。

「や
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