ちょっと変わったお姉さんが少年と旅行に行くお話
[3/20]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
年、少年」
「(やめて、やだ、やだぁっ)」
「おい!? 聞いてるのか! 少年!!」
「……!!!!!!」
肩を掴まれ、現実の世界に戻ってきた少年が、はっと我に返る。
目の前に、長い黒髪の見知らぬ女性がいて、肩を揺さぶっている。
「あ、あ、あの?」
「すまんな、ちょっと遅れた。……急ぐぞ!」
「え、あ、ちょっ」
「まだ新幹線に間に合うだろう!? ほら、切符だ!」
「は、はい!」
女性から切符を受け取り、急いでホームに向かう。
ホームに上がると、ちょうど電車が滑り込んでくるところだった。
「あ、あの……? あなたは、ゆーさん、ですか?」
「そうだが何か?」
「いや、その、あの、えーと」
「何か疑問でもあるのか」
「……」
少年は頬を赤らめ、顔を下に向けて手を組んでもじもじとする。
「その恰好」
「何だ、文句あるか」
「……最初、誰か分かりませんでした」
「ふん、君は私を何だと思ってるんだ、言ってみろ」
少年が顔を上げ、ゆっくりと視線を動かし、女の全身を上から下まで観察する。
薄灰色の中折れ帽子からこぼれる艶めいたさらさらの黒髪と、白い肌を彩るうっすらとしたお化粧。
コンタクトレンズを着けているのか眼鏡をかけておらず、わずかに青色を帯びた漆黒に近い濃紺の瞳が、電車の窓から射し込む陽を浴びてきらきら輝く。
純白のレースのブラウスに、胸元にさりげなく輝く細い金細工のネックレス。
仕立てのいい紺色のジャケットを羽織り、下はベージュのロングスカート。
玄関の隅で埃を被っていた本革のショートブーツも綺麗に手入れされ、ピカピカだ。
街ですれ違ったら、一度振り返ってしまうかもしれない。
背の高い彼女なら――モデル?と勘違いされてもおかしくない。
「綺麗な……お姉様、です」
「よろしい」
「びっくりしました。あなただとは、一瞬、気付きませんでした」
「むむ、失礼な」
彼女の表情が、優し気な微笑みを浮かべたり、眉をひそめたり、豊かに変化する。
「ところで、向こうについたらまずどこへ行くんですか?」
「それは後から説明する、少年、これを持ってくれ」
そういうなり、彼女はキャリーバッグを少年に持たせる。
「あ、結構重たい……何が入ってるんです?」
「それも後で説明する」
電車は終点に着き、2人は新幹線のホームに向かう。
すれ違う人の視線が、自分の斜め上――隣を歩く彼女に向かっているような気がして、少年がちょっと気まずそうな顔をし、顔を俯かせる。
ホームにたどり着いた少年が足元のマークを見て、声を上げた。
「あ! あれ? ここ、グリーン車!?」
「そうだが?」
「あの、その、お金……」
「こん
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ