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戦国異伝供書
第四十一話 人と城その十二

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「攻めぬ様にして」
「越後への抑えとするか」
「そうしましょうぞ」
「ではな」
「そして甲斐から海津までは遠いので」
 山本はこのことも既に頭に入れていた、先の先まで読んでそのうえで考えて晴信に話しているのだ。
「狼煙で、です」
「ことの次第を伝えられる様にしておくな」
「信濃から甲斐まで」
 その海津までというのだ。
「そして道もです」
「軍勢が行き来しやすい様にな」
「整えておきましょう」
「いざという時に備えてな」
「そうしておきましょう」
「その通りじゃな」
 晴信は山本のその言葉をよしとして頷いて述べた。
「そうしてな」
「何があろうともです」
「すぐに動ける様にすべきじゃな」
「信濃は広うございます」
 それ故にというのだ。
「行き来も時がかかり」
「ことを知るにもな」
「そちらもです」
 時がかかるというのだ。
「ですから」
「狼煙で知らせな」
「整った道の上を進み」
「素早く動ける」
「その様にしようぞ」
「それでは」
「今の領地もな」
 その様にしてと言うのだった、そしてだった。
「すぐにな」
「それでは」
「戦は戦の場だけでするものではない」 
 これは晴信の持論でもある。
「その前の用意を万端整えてこそな」
「戦であり」
「勝てるのじゃ」
「では」
「小笠原家を退ければじゃ」
 その時はというのだ。
「もう信濃の南は手に入れた」
「残るは村上家だけですな」
「どちらにしろ用意は必要じゃ」
 村上家と戦うそれがというのだ。
「だからな」
「狼煙と道をですな」
「整えておくとしよう」
「それでは」
 山本は晴信の言葉に静かに頷いた、そうして彼と共に戦の場に向かった。赤い軍勢は今信濃の南を賭けた戦に向かっていた。


第四十一話   完


                  2019・3・8
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