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戦国異伝供書
第四十一話 人と城その七

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「意気を上げてじゃ」
「戦に挑み」
「そして勝つ」
「それが大事ですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだった。
「だから今はな」
「飲みますな」
「この様に」
「出陣前の常として」
「兵達にも飲ませておる」
 彼等にもというのだ。
「次に備えてな、そしてしかとな」
「勝ち栗、打ち鮑、昆布もですな」
「用意されていますな」
「既にな、連歌会もじゃ」
 これもというのだ。
「行うぞ」
「あちらもですか」
「しかと行い」
「そしてそのうえで」
「出陣ですな」
「そうするぞ」
「兄上の和歌ですか」
 ここで信繁が言ってきた。
「楽しみですな」
「わしの和歌がか」
「はい、兄上は昔から和歌がお上手でしたので」
「そうか」
「兄上は文才があられます」
 こう言うのだった。
「ですから」
「楽しみと申すか」
「左様であります」
「だからか」
「連歌会もです」
 それもというのだ。
「行いましょう」
「それでは」
 二人で話してだ、そしてだった。
 武田家の者達は実際に晴信は勝ち栗に打ち鮑そして昆布を食べてからだった。連歌会も開いた。その中でだ。
 幸村は実際に晴信の和歌を聞いて言った。
「いや、それがしはです」
「和歌を学んでじゃな」
「よかったです」
 こう父である昌幸に答えた。
「これまで」
「お主は学問好きだからな」
「和歌も教えて下さいましたか」
「源三郎と共にな」
 兄の信之と同じくというのだ。
「和歌の書も読ませたが」
「それが、ですか」
「よかったな、武士は武芸や兵法も大事だが」
「それでもですな」
「和歌等他の学問もな」
「大事だからこそ」
「学ばせた、それでじゃ」
 それでと言うのだった。
「今それが生きておるな」
「それでお館様の和歌も」
「わかったな、そしてじゃな」
「はい、それがしもまた」
「和歌を詠めるな」
「和歌を詠むことも武士ですな」
「古来よりそうであった」
 本朝ではというのだ。
「武士もまたじゃ」
「和歌を詠み」
「それに親しみ愛することじゃ」
「雅もですな」
「ある、ではな」
「はい、その雅のままに」
 その心を以てと言うのだった、幸村も。
「詠みまする」
「それではな」
 昌幸は自らも詠んでだ、幸村もそうしたが山縣は幸村のその和歌を耳にして目を見開いて彼に言った。
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