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ある晴れた日に
331部分:その日からその二十七
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その日からその二十七

「全然ね」
「強いな、それは」
「強いのね。それって」
「ああ、強いさ」
 また未晴に告げた。
「おたくはな。少なくとも大物だよ」
「自分ではそうは思わないけれど」
 そこまで自信家ではないのだ。
「っていうかそれって」
「まああれだよ。それじゃあ俺も」
「音橋君も?」
「それで行くか。気付いているけれど気付いていないふりをして」
「それで今日のデート過ごすのね」
「ああ」
 楽しそうに微笑んでいた。二人で微笑み合ったまま言葉を続けていく。
「じっくりとな」
「じゃあ。それじゃあ」
 未晴は自分の右手を彼の左手に絡み合わせてきた。それはまさに彼氏と彼女の動作だった。恋人でなければできない動作だった。
「気付いていないってことで」
「やっていくか」
「そうね。それがいいから」
 こう話をしてそのうえで迷路を出る。迷路を出るともうそこで皆の視線を感じる。皆隠れてはいるがそれでも気付いていないふりはする。
「あっ、出て来たわよ」
「遂にだな」
「ああ、やっとって感じだな」
 皆それぞれ木の陰や草陰に隠れている。しかし隠れてはいるがそれでもばればれであった。誰もがその姿をはっきりと見せていた。
「それで今度は何処に行くのかしら」
「ああ、あの先って」
 奈々瀬が二人の歩く方向を見て皆に話す。彼女は木の陰から実にわかりやすいまでにその身体を見せていた。やはり隠れるのはかなり下手だ。
「あれよ。お化け屋敷よ」
「げっ、ここのお化け屋敷ってよ」
「そうそう」
 皆それを見て忌まわしげに話すのだった。
「真夜中の廃虚の病院で」
「そこから何が出て来るのかわからない」
「首なし女とか」
 あまり趣味がいいとは言えない演出ではある。
「あとサイコな医者の手術室とか」
「あそこ内臓とかすげえしな」
「子供入ったら駄目だしね」
 そこまで怖いのである。実際にその怖さで全国的に有名にさえなってしまっている。
「生首が置かれてたりさ」
「あれ本物じゃないわよね」 
 奈々瀬が真っ青になって皆に尋ねる。なおその声は正道達に聞こえる程度である。
「あの生首」
「おい、幾ら何でもそんな訳ねえだろうが」
「あんた何言ってるのよ」
「けれどあれって」
 奈々瀬だけ今にも泣き出しそうな顔になっている。顔が崩れて何処かヤゴみたいになってしまっている。
「冗談抜きでリアルじゃない。目とかお口の中とか」
「本物だったらこの遊園地が潰れるどころの騒ぎじゃないわよ」
 その彼女に恵美が言ってきた。
「そうじゃないの?」
「それはそうだけれど」
 しかし奈々瀬の表情は変わらない。
「けれどさ。時々その首が叫んだり動いたりするし」
「あれ時々エキストラが入ってるのよ」

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