第二章 十三年の孤独
第47話 対話
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自らの目的の為に無関係なシエル達を傷付けてしまった負い目。
複雑に混ざり合った天馬の気持ちを、先程から今に渡る数分の間で全て見透かしていたのか、シエルは淡々と言葉を続ける。
「悩む事は良い事です。ですが、他人の事を思うあまり自分を殺しては意味がない。……天馬、貴方が今するべき事はなんですか? 貴方にしか出来ない事とは、何?」
「俺にしか、出来ない事……」
「貴方には、守りたい物があるんでしょう?」
自分の事を射貫くように向けられた言葉に、天馬は心の底で渦を巻きながら濃くなっていた悩みの靄に一筋の光が差し込んだ気がした。
それと同時にようやく思い出す、いつの間にか忘れかけていた、自分の成すべき役割を――
「そうだ、俺……忘れかけていた。自分が何をする為に、この世界に来たのか」
椅子から立ち上がり、前を見詰める天馬の凛とした表情には先程までの曇りなど一切無く、どこかスッキリしたような印象を受ける。
――ようやく、分かってくれた。
自分を見据える少年の姿にシエルは嬉しそうに目を細めると、何かに気付いたのか。神殿の外へと続く道に視線を移した。
「天馬。どうやら、お仲間達が貴方を捜しているようですよ」
「え、本当?」
「ええ、そろそろ戻った方が良い。神殿の外まではゲイルが案内します」
「ありがとう、シエル」
穏やかに笑みを浮かべるシエルに別れを告げると、長い柱に囲まれた道をゲイルと共に歩きだす。道中、相変わらず無口な少年の後ろ姿にカルムやシエルとの性格の違いを感じながら歩を進めていくと、見慣れた二人の少年を見つけた。
「剣城。それに信助も」
白と黒の濃淡だけで造られた世界では色のついた彼等は嫌でも目に留まり、遠目でも簡単に見つけ出す事が出来た。
ゲイルに礼を言い、自身を捜しに来た二人の元へ駆けだそうとした時。ふと背後で名を呼ばれ、天馬は踵を返す。
そこには顔さえ無い物の真っすぐに天馬の事を見詰めるゲイルが立っていた。
「……今日の試合、勝ってくれ。俺達の為にも」
先程までの無口ぶりとは一変した彼の言葉に、天馬は驚きを隠しつつも一つ頷き「ああ」と強く言葉を返した。
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