第二章 十三年の孤独
第46話 黒い手紙
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ては頭の中を整理していたのだろう。天馬と同様、二人も眠れずにいた。
「そっか。実は俺もまだ少し混乱してるんだ。でも、それよりも……」
「シエルの事か」
剣城の言葉に天馬は頷く。
二人と同じように明日の試合の事も気掛かりな天馬だったが、それ以上にシエルやこの街の住人達の事が気になってしょうがなかった。
カーテンを開け窓の外を見ると、未だ作業が続いているのか、遠くで白い明かりがぼんやりと見える。
「まだ騒いでるみたいだね」
「……どうした、天馬」
窓の外を見詰める悲しそうな表情に剣城がそう言葉をかける。
「いや、なんでもないよ。明日の試合、シエル達の為にも絶対勝たなくちゃ……って思って」
「ああ、そうだな」
「……だね」
頷く二人の言葉を聞き薄い微笑みを返すと「もう寝よう」とカーテンを閉め、天馬はランプの灯りを消した。
他二人と「おやすみ」と言葉を交わし布団に潜ると、閉じたカーテンの隙間から漏れる光に目をやる。
――俺達がここにいなければ、シエル達に危害が及ぶ事もなかったのかな。
「そう思ってしまった事は、二人には黙っていよう」と心で呟くと、天馬は静かに瞼を閉じた。
「ついに、奴等が動きましたね」
場所は変わって一同の泊まる宿屋の前。
ローブの男はそう言葉をかけると、特徴的な緑色の瞳に少年の背中を映し出す。
「そうだね……」
高く築かれた柱の上に座り返事をするアステリは、男の姿を横目に捉えると言葉を続ける。
「この前はありがとう、天馬達を助けてくれて。キミの『色の力』のお陰で怪我も大事に至らなかったみたいだし」
「私はただ主人である貴方を助けただけです。……それに、あそこで彼等に倒れられては私の目的も果たせなくなる」
淡々と語る男の言葉にアステリは「そっか」と小さく唱えると、目を細めじっと広場の方を見詰めだす。
「……明日は試合でしょう。いくらイレギュラーだからとは言え、休息はとった方が良いですよ」
「ありがとう。でも、もう少しだけここにいたいんだ」
「それは彼等への罪悪感故ですか?」
男の言葉にアステリの動きが止まった。
しばしの沈黙の後、男は視線を地面に落とすと「失礼」と謝罪をする。
「過ぎた事を言いました。……お互い、不干渉が条件でしたね」
ばつが悪そうな声色で囁いた男に「構わないよ」と返すと、アステリは視線を男の方へと向け言葉を続ける。
「それより、これ以上の長居は危険だ。キミも行った方が良い」
「……ですね」
フードを目深にかぶりながら男は腰を上げると、アステリの方へ向き直り頭を下げる。
「では私はこれで。くれぐれもお気をつけて、主人」
「ああ、キミも気を付けて」
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