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色を無くしたこの世界で
第二章 十三年の孤独
第45話 空の街【ヒンメル】
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、目の前の彼はそうではない。
 怪我をすれば痛みを伴い、最悪の場合命を落とす。自分達はそんな弱く脆い存在であると、あの時、動かない体と共に思い知らされた。 

「……ッ。アステリ――」
「こんな夜更けにお散歩ですか?」

 突如、静かな空気を破って響いた声に天馬は目を見開き驚くと、体ごとその方向に視線をやった。
 そこには先程出会ったばかりの、それでいてとてもよく見慣れた姿を持つ一人の少年が立っていた。

「シエル」
「こんばんは、今日は良い風が吹いてますね」

 穏やかな笑みを浮かべながら二人の元へ歩み寄ってくるシエルにアステリが尋ねる。

「キミこそ、どうしてここに。ボク等に何か用かい?」
「用と言う程ではありません。アナタ達の事が少し気になりましてね。見回りがてら様子を見に来たんです」
「見回り?」
「えぇ。住人達の様子を見て回るのも、長として大切な仕事ですから」

 シエルの言葉に天馬が不思議そうに首を傾げた。

「でも、シエルは何でも知る事が出来るんでしょ? わざわざ見て回る必要なんてあるの?」
「確かに、俺には世界に吹く風から住人達の状況を知り得る力があります。ですが……やはり上に立つ者としては、実際に民と触れ合いその声を聞く事が必要なのです」

 凛とした口調で長としての在り方を語るシエルの姿に天馬は柔らかな笑みを刻むと「凄いね」と目の前の彼を褒めたたえる。
 そんな天馬の後ろで訝し気な視線を送るアステリ。自身に向けられる不信の眼差しに気付いたシエルは、目を細めると向かいの少年に穏やかな笑顔を返した。
 唐突に向けられた表情にアステリは一瞬目を瞬かせると居心地が悪そうに目を伏せてしまう。

――同じ顔で、そんな風に笑わないで。
――意味も無く、信用しそうになる。

「ん? アステリ、どうかした?」

 天馬と同じ顔を持つ得体の知れないシエルへの不信感に自然と無口になっていると、異変を察した天馬に声をかけられた。
 バッと下げていた頭を上げると心配そうに自分を見詰める灰色の瞳と目が合い、慌てて「なんでもないよ」と平然を装った。

 ふと空を見上げると先程まで見えていた満月にも雲がかかり、あたりを先程よりも暗く染め上げている。「そろそろ部屋に戻ろう」なんて言葉を交わす二人にシエルも別れを告げ自分の業務に戻ろうとする。
 そんな時だった。突如、大砲のような凄まじい爆音が三人の耳を劈いたのは。

「なんだ!?」

 まるで巨大な樹木が倒れたか如く響く爆音は地面を揺らし、三人の身動きをしばらく封じた後治まった。何事も無かったかのような静けさに天馬は瞳を揺らすと戸惑い気味に声を漏らす。

「今のは一体……」
「天馬、アステリ。怪我はありませんか?」

 傍にいたシエ
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