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色を無くしたこの世界で
第二章 十三年の孤独
第44話 出会い
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ぐに前を向いたまま歩みを続ける。

「すみません、ゲイルは心配性なんです。決して貴方達を嫌ったりしてる訳ではありませんから……」

 そう、ゲイルに聞こえないような声でカルムが謝るのを「大丈夫だよ」と天馬が優しく返した。

「それにしても、この街のイレギュラー達はずいぶん友好的なんだな」

 霧野が先程から抱えていた疑問をカルムに投げかけた。

「あぁ。それは長の教えなんです。"世界や見た目が違えど存在する者は皆同じ。だから怯えたり怖がったりする必要はない"って」
「ずいぶん変わった考えを持っているんだね、その子」

 少し離れた所でアステリが尋ねるように唱えた。

「まあ、イレギュラーとしては変わってますかね。でも、僕も街の皆もそんな長を強く慕っているんです」
「慕って…………」

 嬉しそうに語るカルムの言葉にアステリはそれ以上言葉を紡ぐのを止め黙り込んでしまった。
 思考や感情と言った生物特有の特性を持たないイレギュラーがこのように他者と会話をし、意思の疎通を行うなんて事は本来ならありえない。
 ましてやこんな風に自分では無い存在を理解し、慕うだなんて思考を持つのはイレギュラーの中でも特殊な色と顔を持つ者だけだ。
 それなのに、目の前の二人……否、この【ヒンメル】と呼ばれた街の住人達は黒一色の容姿とは裏腹に自我を持ち、互いを理解し、まるで色彩の人間と同じ生活を送っている。
 「理解出来ない」……自身の知識では到底ありえないはずの現実に、アステリは強く眉を顰めた。

「へぇ、俺も早く会ってみたいなぁ。その長って言う人に」
「きっと長も貴方達の事を歓迎してくれますよ!」
「どうだろうな」

 和気あいあいと言葉を交わす天馬とカルムにゲイルが静かに囁いた。
 その様子にカルムは「もう」と不満そうな声を上げる。

「ゲイルは本当、心配性なんだから!」
「……そうじゃねぇよ」
「え?」

 二人の会話を聞きながら長い柱で囲われた道を歩いて行く。
 「そうじゃない」とはどう言う意味なのだろう。薄灰色の空を見上げ、天馬は考えた。




 しばらくカルムとゲイルについていくと、長い柱で囲われた道とは一変。少し開けた場所に出た。

「つきましたよ」

 ゲイルの促す先に視線を向ける。
 そこには白い檻のような形をした巨大な神殿が天馬達を見下げるように佇んでいて、一同は息をのむ。

「うわあ……ゲームみたい!」
「長、来客をお連れしました」

 「すごいすごい」と興奮した様子ではしゃぐ信助を一瞥すると、ゲイルは神殿の中にも聞こえるような大きな声で言葉を発した。
 数秒の沈黙の後、入口の方からコツコツと石畳を歩く音が聞こえて来る。
 段々と近付いてくる足音に耳を傾けな
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