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色を無くしたこの世界で
第二章 十三年の孤独
第44話 出会い
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て一同も不思議そうにその光景を見詰める。
 嬉しそうにはしゃぐカルムの様子を見ていると、背後からワントーン低い男の声が聞こえた。

「カルム。作業の途中だろ。何をして――……?」

 そう言ってカルムの後ろから姿を現したのは、右サイドに流れたクセ毛にカルム同様、翼の形を模したペンダントを付けた男。
 男は天馬達を見ると少し警戒した声で「誰?」とカルムに尋ねた。

「あ、『ゲイル』! この人達ね、お客さんだよ! しかも人間! 僕、人間って初めて見て――」
「見れば分かる。……で、何の用で?」

 ゲイルと呼ばれた男はカルムの言葉を遮ると、浅いため息を吐き、天馬達に尋ねた。
 今まで出会った異形と同じく顔と色の無い彼だが、その口ぶりから天馬達に対し不信感を抱いているのは一目瞭然だった。
 目の前のイレギュラーに対し警戒心を抱きながら、でも決してそれを表に出さぬように、フェイが言葉を返す。

「ボク達は、この街の先に用があってこうして歩いてきたんだ。それで、出来れば少しの間この街で休ませてもらえたらと思って……」

 長時間の歩行でメンバー達の顔にも疲れが出ている。
 こうやって顔の無いイレギュラーと話す事が出来るだなんてフェイ自身思ってもいなかったし、不安もあるが、今は贅沢は言っていられない。
 フェイがそう説明すると、ゲイルは少し考え込んだ後「ではついて来てください」と天馬達を招き入れてくれた。

「入れてくれるやんね」
「俺等の事、警戒してるみたいだけどね」

 言われるがまま、二人について行く一同。
 街は砂地の地面にいくつもの石や岩が柱のように建ち、同じく石や岩で出来た家屋が立ち並んでいる。
 道中、街の様子を興味深そうに眺める天馬達にカルムが話しかけた。

「この街は【ヒンメル】と言います。皆、石を加工して家を作りそこに住んでいるんです」
「へぇー」
「全部、自分達だけで建ててるのか?」
「はい!」
「この家全部?」
「はい! あ、でも石の加工は機械でやってますよ」
「凄いな……」
「てか、なんでお前までついてくるんだよ」

 そう言うと、ゲイルは隣で歩くカルムをギロリと睨んだ。
 ……実際、彼等には顔が無いので睨むと言う表現は正しくは無いだろうが、そんな素振りをした。

「お前は作業中だろ。持ち場に戻れよ」
「少しくらい平気だよ。今は休憩時間だし、僕も久しぶりに"長"に会いたい!」
「長?」

 カルムの言葉に円堂が首を傾げた。

「この街の長に貴方達の事を伝えに行きます。外の……しかも色のついた存在ですし」
「結局疑ってんのかよ」
「まあまあ……」

 ぼそりと呟いた水鳥の言葉に傍にいた葵が宥めに入る。
 そんな事を知ってか知らずか、ゲイルは真っす
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