第二章 十三年の孤独
第42話 モノクロ世界
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用ならん。敵の目的は世界から色を消すとかなんだか言っていたが、そんな事本当に出来る奴がいるのか?」
「……今、俺達がいる場所が答えだろ」
そう言って剣城はグルリと周囲を見渡す。それに釣られて白竜も周囲の様子を再確認する。
古い映画の中に入り込んでしまったかの様な、モノクロ色で包まれた世界。自分達の現実に確かに存在する、異様な世界の光景に白竜は眉を顰めた。
「もし本当に、色を奪うなんて力があるなら。なぜわざわざ俺達を襲う? こんな大それた事を可能にする力があるなら、サッカーなんて回りくどい事をせず、とっとと目的を果たしてしまえば良いだろう」
「それを今から知りに行くんだろ。少しは落ち着けよ、白竜」
次第に熱を帯びていく白竜の言葉に、咎めるように剣城は言う。
「一つ、訊いても良いか」
「……なんだ」
「今回の騒動に関わる上でフェイから言われたはずだ。アステリの事も、この世界の事も。……お前はさっき全てが信用ならないと言ったが、それならばなぜ、嘘か本当か分からない今回の騒動に関わるようなマネをした」
剣城の問いに白竜はハッと笑うと、腕を組み「愚問だな」と言葉を続ける。
「例え真実がどうであろうと、サッカーを失うかも知れない等と言われれば、断る事など出来る訳無いだろう」
「俺達も同じだ」
「!」
「俺も、他のメンバーも、未だ理解も納得も出来ない事ばかりで混乱している。アステリの事を疑う気持ちが無いと言えば嘘になるだろう。だが、今の俺達には進むしか選択肢が無いんだ。……いなくなった皆を元に戻すには、な」
そう白竜を宥めるように吐いた剣城の言葉は、まるで自分自身に言い聞かせるようにも聞こえた。
自然と伏し目がちになる彼の脳裏に浮かぶのは、先日の黒い異形との試合。
あの場にいなかった白竜には理解しがたい、今まで培って来た自分達のサッカーが全く通用せず、ただ呆然一方に叩き伏せられる屈辱と苦痛は、剣城の心にトゲのように刺さり残っている。
「全てを信じろとは言わないが、今はアイツの言葉に従ってみようぜ」
「…………不本意だな」
いつもの様に冷静に唱えた剣城の言葉に白竜は納得しない様子で吐き捨てると、先を行く仲間達の方へ向かい歩きだした。
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