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駄目親父としっかり娘の珍道中
第87話 テキーラをバケツで一気は止めましょう
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離れ業をやってのけたのだからそれは隊士達から憧れの視線を向けられて当然と言えるかも知れない。

「お、おい・・・大丈夫か? シグナムーーー」

「無理だな、こりゃ・・・投げられた拍子に酔いが回って寝ちまったみたいだ」

 完全に寝落ちしてしまった|乳牛野武士<シグナム>を放置して、土方とザッフィーの二人は凶悪なダブルタイフーンを鎮めた功労者に近づいた。

「手間かけさせちまったな。生憎こっちじゃ手に負えなかったもんでな」

「気にしなくて良い。僕もたまたま騒ぎを聞きつけて野次馬感覚で来ただけだ。それにしても驚いたよ。まさか此処で彼女に会えるなんて」

「彼女?」

「この人は僕の知り合いなんだ。とても話を聞いてもらえる状況じゃなかった故に少々手荒な事をしてしまった。そちらの女性には申し訳ないと思う」

「なぁに、あいつも結構なタフだ。この程度で参るような奴じゃない。それにしてもお前かなりの腕だな。ガキの癖に中々どうしてーーー」

「一つ、訂正させて貰いたい」

 土方の言葉を遮り、少年は口を開いた。

「僕はガキじゃない。こう見えて既に成人している」

「そうか、んじゃあんた名前は? 名前がないんじゃなんて呼べば良いか分からんしな」

「そうか、まだ名乗ってなかったな。僕の名はーーー」

 その時だった。

 土方の背筋に鋭い悪寒が走ったのは。

 咄嗟に自身の腰に挿してある刀に手を掛け、そのまま振り抜こうとした。

 しかし、それよりも早く、目の前の青年は土方のすぐ真ん前にまで近づき、彼の腰に挿してあった刀の持ち手の底に手を置き、抜刀を防いでいた。

(は、速い・・・)

 その時の土方の頭に浮かんだ言葉がそれであった。こちらの抜刀する瞬間に間合いを詰めて相手の刀を抑えて抜刀を防ぐ。

 相当の手練れでなければ出来ない芸当だった。

「僕は柳生・・・【柳生九兵衛】と言う。それから、僕から一つ忠告だ」

 被っていた傘帽子を外し、素顔を見せる。其処から見えたのは片目に眼帯を掛けた隻眼の青年だった。
 綺麗な黒髪を後ろに束ね、まるで女性とも思えるような整った顔立ちをした美青年だった。
 その青年は淡々と語っているが、その間土方は一切刀を抜く事が出来なかった。

 こちらの持ち手を抑えている一方で、既に青年の方は自身の得物に手を添えていた。

 下手な事をすれば即座に横一文字に切り裂かれる事は間違いない。

 そう判断した土方は身動き一つ出来ず、ただただ額から冷や汗を流すだけであった。

「此処は酒を飲み会話を楽しむ場であろう? そんな場でこんな無粋な物を振り回すのは感心できないな」

(良く言うぜ。てめぇの方こそ何時でも抜けるようにしている癖にーーー
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