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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
予行演習《プロローグ》
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はり、アリアにとって図星だったのだろう。何度も頷きながら、その度にまた一層強い嗚咽を洩らしていた。自尊心の高いアリアだからこそ、平然とした理子の態度が気に食わなかったのだ。
何分くらい、こうしていたろうか。少なくとも10分ほどは、こうしてアリアを慰めていたように思う。その間、往来を行く人々が不思議そうに自分たちを見ていたのを、忘れてはいない。何事かと一瞥する者や、大丈夫かと訊いてくる者、恋人の痴話喧嘩だと囃し立てる者も居た。
その度に、そんな生半可なお遊び調子の分際で──と口走りかけたことも、覚えている。
兎にも角にも、十数分ほどして、アリアはようやく泣き止んでくれた。
「ほら、アリア。こっち向ける? ……あらら、こんなに泣き腫らして」
十数分ぶりにアリアと顔を見合わせる。目尻のあたりは赤く泣き腫らしていて、それを少しでも隠そうと、前髪を下ろしていた。後は決まりが悪そうに目を伏せていて、「……ごめん」と小さく呟くだけだった。「ふふっ、どうしてアリアが謝るの。謝らなくてもいいんだよ」そう苦笑する。まだ少しだけ潤んでいる生温い紅涙を、親指の腹で綺麗に拭い取ってやった。
そうして、徐にアリアの両手を包み込むようにして握る。握った彼女の手は華奢で、温柔で、肌理細かで、何より、温和だった。子供のような愛嬌のある手で、可愛らしかった。
「なっ、何よ……いきなりっ」
泣き腫らしている目尻と、羞恥のために紅潮した彼女の頬とは、色合いが似ていた。
「ねぇ、アリア。如月彩斗は君のパートナーとして、武偵殺しを逮捕するつもりなんだ。けれど、それが1人で出来るかは分からない。君1人でも同様だ。でも、2人なら──類推は確信になる。……パートナーとして、もう1週間近くを一緒に過ごしているでしょう。だからこそ、俺はアリアを信頼してる。だから、アリアも俺を信頼してほしい。言っていることは分かるね?」
この感情は、明らかに彼女への同情から芽生えた感情であるのだと、自覚していた。それと同時に、《教授》の名乗る例の男の
意嚮
(
いこう
)
に合致していることも、承知していた。しかし形は同じでも、感情の芽生えた根本そのものが異なるのだということも、また理解していた。
どちらでも構わない。その根本が同情の気質だろうが、お人好しな自分の性格だろうが。こうした感情を抱けたことに、彼女に対するパートナーのしての掛り合いを、垣間見れたから。
「だからこそ──アリアを護りたいと、思ってるんだ」
◇
昨日を思い返しても、これほど急速に事態が進展したことは、1年続けてきた武偵校生活の中でもそうそう無かったように思われる。だからこそ、迅速な事前作戦立案が必要だった。同時に、それを敢行するための休息を摂ること
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