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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
本当にそれでいい?
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人すらも犯していない。表層的には、単なる愉快犯めいた、罪科愛好家の犯行にしか思えないのだ。
武偵殺しの存在を峰理子と仮定してしまった今、或いは武偵殺しがアリアを何らかの理由で誘き出しているとも仮定してしまった今では、そんなような犯行も、ただの茶番なのだが。
アリアも言った通り、122年ぶんが武偵殺しに科せられるべく刑期だ。残る742年ぶんは、武偵殺し以外の冤罪ということになる。アリアが追っているのは、武偵殺し単独ではない。
「ねぇ、横槍を出すみたいで申し訳ないんだけどさ……」と切り出して、その旨を告げる。そうしてアリアは、何度か頷きながら聞いてくれていた。「その推理で間違いないわね」とも。
「彩斗、このことは周りには言っちゃ駄目だからね。文字通り
消される
(
・・・・
)
から。……武偵殺しが所属しているのは、《イ・ウー》っていう組織。アタシの最終目標」
消される──たった4文字だけで、この《イ・ウー》とかいう組織の表層を理解するのには、それでも充分だった。武偵殺しを逮捕すれば、自ずと《イ・ウー》にも近付ける。それは同時にアリアの母親、神崎かなえさんの冤罪を解く資料にもなり得るのだ。十二分の収穫だった。
厳粛を極めている少女に、そっと苦笑してみせる。「大丈夫、絶対に言わないよ」
娘とそのパートナーとの遣り取りを、母親は憂慮と同時に安堵を滲ませながら、傍観していたように思う。そうして徐に、自分に呼び掛けた。面会の時間は、もうそれほど残ってはいない。
「……《イ・ウー》に触れたら、もう後戻りは出来ません。その覚悟がお有りですか?」
「ふふっ、愚問も愚問です。そもそもアリアがパートナー契約をせがんできた時から、生半可な調子じゃどうにもならないとは──察していましたから。やるべきことは、決まってるので」
「……そうですか。それなら、娘のことはパートナーの貴方にお任せします」
《教授》と名乗った例の男──彼は自分に、アリアを守らせようとしている。それは勿論、何があろうと敢行するつもりだ。同時に、《イ・ウー》に手を伸ばす手立てとして、武偵殺しを利用しようともしている。自分の成すべきことは、今や明々白々になっていた。そうして勘づいていたとおり、やはり、生半可な調子ではどうにもならない、容易ならぬことであることも。
そんな時に監視官は、そろそろ時間だと告げた。彼女は小さく頷くと、アリアを見詰める。
「……《イ・ウー》とは、無理はしない程度に闘いなさい。その身が朽ち果ててしまったら、元も子もないでしょう。そのためのパートナーなのだから、お互いに信頼関係を築くこと──それが出来ないような2人なら、最初から、その仲ではなかったということなのだから」
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