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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
武の論立者
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クラスの人にも聞いたりしてたけど」
「やっぱりね。それだよ。その動きが、武偵殺しに露呈していたんだ。それと同時に、武偵殺しが俺たちやアリアとを監視できる、身近な存在であると言えるね」


口端が緩むのを、自分自身で自覚している。同時にアリアは、その目付きを鋭敏にしていた。この論説の詳細を知っている2人だからこそ、こうして納得しているものの──現在進行形で説明されている当の本人は、「どうして神崎と俺たちと武偵殺しが関係あるんだ」と洩らしている。


「端的に言うと、武偵殺しの狙いはアリアだよ。俺たちは、それを誘き出すための絶好の撒き餌だったってわけだ。見る限り、アリアは何らかの理由で武偵殺しを追っている。そこに戦力増強のためのパートナーを求めていたんだろう。その候補が俺たち2人だったから、アリアにとっては影響の大きい人員だろうしね。それだけ餌としての質も高い。そうして同時に、武偵殺しも、アリアを誘き出すために活動をしていると類推できる。その発端は、2008年の12月」


その年月を口にしただけで、キンジの表情がはっきりと曇った。無理もないだろう。胸の内、奥底に仕舞ったはずの記憶が──つい今しがた、眼前にその全貌を突き付けられたのだから。それでも武偵殺しを語る以上は、この事件の話は避けて通れないのだ。


「『アンベリール号沈没事件』と題されたこの事件以来、武偵殺しは姿を秘していた。そうして本当の意味で活発化し始めたのが、始業式の日。アリアが転校してきた年度で、俺やキンジと接触する確率が多分に増加した日のことだね。事実、その通りになった。そうして、模倣犯ではないことも確信したわけだ。例のセグウェイも、鑑識科から出た鑑定結果を見れば、ところどころ高価な部品が使われていたし……ルノーといえば高級車だ。それに、確実に人を殺せるC4爆弾もそこには仕掛けられていたでしょう。財力的に模倣犯はここまで出来ない」


「ここまでをまとめてみると──」言い、4本指を掲げる。


「この一連の騒動は、武偵殺し本人によるものである。武偵殺しは、ある程度の財力を持っている。武偵殺しは、工作活動が得意である。武偵殺しは、身近な存在である。……ねぇ、誰だか思い当たる節は、無いわけではないよね。そうして君は、それを信じ切れないでいる」


キンジは大きな溜息を1つ吐きながら、額に手を添えた。そうして、頷いた。この論説によって生み出された煩悶と懊悩を、一挙に晴らそうと躍起になっているのだろうか。それでももう、この靄は、自分自身でさえ、なかなか晴らそうにも晴らすことが出来ないのだ。


「武偵殺しは──峰理子だろうと、仮定している」


休日の朝には似つかわしくない雰囲気が、この部屋一帯に広まっていた。
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