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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
最初の大舞台 U
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爆弾を剥がしてもらいたいところだが、往来には車通りも少なくはない。ここで敢行するというのも、文字通りの『敢行』になってしまうだろう。どうしたものか……。



「アリア、この先に開けた場所はある?」
「えっと──1つだけ。今、通信科から連絡がきたんだけど、レインボーブリッジ付近は通行止めになってるみたい。警視庁が手を回したのね」
「……そこが勝負だね。レキを信じるしかない」


今、この状態で民間人に対する防護壁となるものは、何一つとして絶無だ。だから、確実に決められるのは──そこだけだ。こればかりは本当に、レキを信じる他には無いのだから。
バスはそのまま予定通り、レインボーブリッジへと走らせていく。そうして、最初で最後の、絶好の狙撃ポイントを迎えていた。車内に居る全員が祈るようにして待機している中に、突如、声が聞こえてくる。これもまた、聞き慣れた──あまりにも有名な言葉が。


『──私は、1発の銃弾』


これは、レキが狙撃する時の癖だと言われている。


『銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない──』


狙撃の精度を高めるルーティーンだとも、また。


『──ただ目的に向かって、飛ぶだけ』


そんな詩のようなものを呟き終えた、直後だった。聞こえた銃声の後に、一拍遅れて、車体への着弾の衝撃が伝わってくる。何かが落ちる音も聞こえた。これが爆弾なのだろう。
次いで、甲高い音もこの一帯に反響した。銃弾が爆弾の部品か何かを掠めたのだろうか──そうして飛び跳ねた爆弾は、レインボーブリッジの中央分離帯、その更に下へと落ちていく。
水中に沈みこんだそれは、辺りの水を押し上げるようにして、轟音を伴って爆ぜた。水飛沫がバスの車体に飛び散っていく。それを合図にバスはだんだんと減速していき、遂には、レインボーブリッジの中間あたりで止まった。止まったと自覚したのは、周囲の歓喜を聞いてからだった。


「──っ、良かったな彩斗! お前たちのおかげだっ!」


その車輌科には似合わないほどに太い腕を、武藤は首に回してきた。焦燥も何も無い。いつもの磊落な調子に戻っていた。彼にはこれがいちばんお似合いだ。
「うん、良かったね」と軽く苦笑しつつ、周囲の歓喜に揉まれているアリアに視線を向けた。アリアもそれに気が付いたようで、何とも言えないような苦笑を返してくれる。
自分の言いたいことは煩い車内ではどうせ聞こえないだろうから、読唇してもらおう。


──ありがとう。


アリアの反応を確認せずに、レキと話をしようとしたのは、ちょっとした羞恥心から逃れたかったためなのだろう。我ながら素っ気ないなと思ってしまいながらも、口は開いてしまっていた。


「レキ、本当にありがとうね。
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