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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
思いと想い
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ねぇ、お風呂借りていい?」
「……好きにしていいよ」
「ありがと」


どうやらあのトランクの中身は、生活用品入れだったらしい。そうしてご機嫌そうに入浴へと向かうアリアの後ろ姿を見届けてから、俺は席を立つついでにゴミを捨てておく。
そのままキンジの後を追うように彼の部屋の前まで移動する。軽くノックをすると、すぐに中から声が返ってきた。


「何だ?」
「俺だ。ちょっと邪魔するよ」
「あぁ」


そう言ってから、キンジの部屋へと足を踏み入れる。綺麗に整頓された部屋は、キンジのおおまかな性格を示唆していた。
ベッドの上に寝転がって漫画を読んでいるキンジの近くに腰を下ろしてから、前置きも早々に口を開く。


「ねぇ、今朝のことなんだけど」
「……なんだ。チャリジャックか?」
「それも重要だけど、違う。キンジの白雪への態度だよ」


少しばかり強めの荘厳な口調でそう告げてやると、キンジは手にしていた漫画をベッドの脇に置いた。『何だと……?』と言いたげな視線を寄越してくる。真剣な話だと予感したらしい。


「朝早くからご飯を持ってきてくれる──この事実の有難味をさ、分かっていないでしょ。そもそもキンジは白雪に好意を向けられていることさえ、知らないだろうに」
「どうした、いきなり」
「面倒臭いから端的に言うね。幼馴染とはいえ、好きでもない子に女子は手作り料理なんかを持ってこないよ」


そこまで聞いたキンジは、何やら唖然とした顔をしていた。どうやらこの意味が飲み込めていないようだ。……いやはや、ここまで鈍いとは思ってなかった。どうしてこんなに鈍いのだろうか。
小さく溜息を吐く。もう少し分かりやすい表現にしてみよう。


「もっと分かりやすく言おうか。白雪は、キンジのことが──好きだ。だからこその行動なんだよ。それがなんだ、女子に対するHSSやら性的興奮やらに怯えて……。傍観している俺の身にもなって。早くカップル成立してくれないかなって思ってるよ」
「……もしかしてお前、怒ってんのか?」
「ある意味、まぁ、怒ってるよ」


そこで、これ見て。そう付け加えた俺は、武偵校の帰りに書店で買ってきておいた1冊の本を、制服の内ポケットから取り出す。
それをキンジに手渡せば、彼の露骨に嫌そうな顔が見れた。それもそうだろう。なにせタイトルは──、


「『片思い女子の取扱説明書』……おい、ふざけんなッ」
「あいにく、本気なんだよねぇ。どうあっても遠山キンジには件の幼馴染とカップル成立してほしいわけだ」
「勝手にお前の意向を押し付けられても、俺としては困る」
「君はいつまで白雪の好意を無視するおつもりで?」
「それは……まぁ、悪りぃと思ったよ」
「じゃあ、そういうことだよ。お話はこれ
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