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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
神崎・H・アリア
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。好都合とでも言うように、銃をレッグホルスターに収め、代わりに背中から小太刀の日本刀を抜いた。
逆手に握られ、振りかぶられた刀の刀身は、数秒もすれば防刃制服に達するだろう。流石にこれは防がざるを得ない。隠匿していた鞘から抜かれた《緋想》と日本刀とが、鍔迫り合いになった。しかしアリアは持久戦を嫌ったのか──即座にバックステップをして勢いを付けてから、大きく1歩踏み出して、刀身を突き出すようにしつつ──今度は腹部を狙ってきた。
「──やぁっ!!」
制服の繊維を削がれようと、貫通されなければどうということはない。右足を引いて直撃を防ぐと、突き出されたアリアの手を踏み場に脚力を溜めてから、月面宙返りを放つ。
振りかぶった足先に感触が無いということは、上体を反らして避けられたのだろう。少しの距離を置いて着地したところに、彼女もちょうど後方宙返りで間合いをはかっていた。
髪と制服とが隙間風を孕んで大きく靡いている。その華奢な足を床に付け──ようとして、アリアは大きく体勢を崩した。
「──うみゃっ!?」
何事かと思い、足元の床に視線を遣る。薄暗くてよく分かりにくかったものの、天窓の陽光がその存在を告げていた。入口付近で散乱していた空薬莢だ。それがこのあたりにも飛び散ってきていたのだろう。……気が付かなかった。下手をしたら、自分がその罠を喰っていたかもしれない。
しかしこれは、早々にこの場を抜ける絶好の機会だ。これ以上に面倒事を起こさないためにも、その根幹は教務科に目を付けられないためにも──まさか始業式からこんなことになるとは予想していなかったものだから、少々驚いたね。
「へぇ、空薬莢があったんだね。見えてなかった。ご愁傷様。……それじゃあね、アリア。今度はいつ会うか分からないけど」
「ちょっ、待ちなさいっ──わぉきゃっ!?」
何度も立ち上がろうと難儀しているのに、アリアの足元を掬うのはいつもこの空薬莢だった。それほどまでに冷静さを欠いているのだろう。漫画みたいな光景だね、とふと思った。
アリアに向けて手を振ると、すぐに踵を返して倉庫を後にする。背後に降る少女の声と正面に降る春陽とに挟まれながら、武偵校の校舎へ向かって歩を進めていった。
──空には春霞が掛かっていた。
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