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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
神崎・H・アリア
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と、見た目より幼く見られたのが気に触ったのだ。そういう年頃の少女だと考えれば、何らおかしいことでもない。
「……あぁ、ごめんね。インターンで入ってきた小学生と誤解してた。なぁんだ、中等部の子なら、そう言ってくれれば──」
──良かったのに。そう告げる暇さえ与えてくれはしなかった。
アリアは再装填を済ませていた2丁拳銃のコルト・ガバメントを徐に構えると、一分の逡巡すら見せずにこちらの足元へ発砲する。
思わず身じろいだ。勝気な印象があるとはいえ、45口径の轟音を間近で聞かされてしまえば、それも仕方がない作用かもしれない。半歩だけ退いてしまった右足を、戻そうとしていた。
「アタシは……高2だっ!」
その叫喚が体育倉庫一帯に反響するのに、それほど時間は掛からなかった。とはいえ俄に信じ難いその言葉を理解するのには、数秒を要した。さて、どうしたものか──と諭すように告げる。
「……君。いくら大人っぽく見られたいからといっても、発砲で威嚇はないでしょう。不必要な発砲は控えておくれ」
「
Wanna get killed?
(
殺されたいの?
)
」
「……流暢な英語だね。本当に申し訳なかった。ごめんね」
その風貌といい、この英語といい、アリアは恐らく純日本人ではないだろう。ハーフかクォーターか、そんな気がする。
ここで銃を抜き返すのが武偵校ではあるけれども、何より無駄な騒動は起こしたくはないね。ただでさえ、さっきのチャリジャックで教務科には連絡がいっているはずなんだ。これ以上は人間関係の面で面倒事を増やしたくない。
「だから、ね? その物騒な銃を仕舞っておくれ」
「……やだ。絶対に許さないから」
俺のことを許す気は毛頭無いらしいアリアは、手にしていた白銀と漆黒のガバメントの照準を──迷いなく、頭部に向けた。そうしてトリガーガードに掛けていた指を、引き金へとずらしていく。どうやらこの子は、本気で撃つつもりらしい。
「……自分の感情に身を流すというのは、あまり勧めないよ」
その言葉がアリアに聞こえていたかは定かではない。ただ、可愛らしく口の端を歪ませてから──引き金を引く刹那に、銃弾が頭部側面を通過するよう、その軌道を僅かに逸らしたのは見えた。
──倉庫内に、重厚な銃撃音が響く。
それでもなお、自分は防御の構えをとらなかった。……いや、とる必要がなかった、という方が正しいか。アリアの狙いは、銃弾の回避運動をする隙を目掛けて追撃することだろう。だから敢えて、その刹那に銃弾の軌道を逸らしたのだ。撃たれるだろうから避けねばならないという心理を逆手にとるために──。
突然の銃撃に自分が動じなかった場合の追撃も、アリアは準備していたのだろう
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