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戦国異伝供書
第四十一話 人と城その四

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「恐ろしいことになります」
「わしが上洛出来ぬな」
「そうもなるかと」
「そうじゃな、わしとしてもな」
「不本意ですな」
「極めてな」
 こう言うのだった。
「そうならねばよいが」
「ですな。上杉家は百二十万石で」
「三万の兵がおる」
「非常に強いです」
 その勢力だけでというのだ。
「尚且つです」
「長尾虎千代自身がな」
「まさに鬼神の如き強さ」
「ならばじゃ」 
 尚更とだ、晴信は話した。
「余計に戦いたくはないわ」
「ですな」
「しかもその家臣もじゃ」
 景虎に仕える彼等もというのだ。
「優れた者達ばかりじゃ」
「当家にも負けぬまでの」
「だからじゃ」 
 それでというのだ。
「海津城でも無理かな」
「若しくは無視してさらに踏み込むと」
「三万の兵があればじゃ」
 それだけの大軍がというのだ。
「海津の城への抑えを置いてじゃ」
「そのうえで」
「そうじゃ、主力はな」
「南に降り」
「わしとの雌雄を決してくることも考えられる」
「そうもなりますな」
「わしは負けぬ、しかしじゃ」
 負けはしないがというのだ、晴信はこれは慢心ではなく自分そして景虎の器を見切っていてそれで言うのだ。
「あの者と雌雄を決すればな」
「負けぬまでも」
「我等は多くの者が倒れる」
 武田の者達がというのだ。
「将帥も兵達もな」
「そうなるので」
「だからじゃ」 
 それ故にというのだ。
「わしはあの者と雌雄を決するつもりはない」
「信濃を手に入れた時点では」
「降すのは後じゃ、上洛してじゃ」
 そうしてというのだ。
「そこで降すことは考えておる」
「しかし」
「今戦うつもりはじゃ」
 それはというのだ。
「ない」
「左様ですか」
「そしてじゃ」
 晴信はさらに話した。
「若しあの者が二万や三万の兵を率いてこちらに来てもな」
「戦わずですか」
「去るのを待つ」
「そうして戦にならぬ様にされますか」
「多くの者を失わぬ様にな」 
 このことを考えてというのだ。
「そうする、して信濃はな」
「戦をされる間にも」
「足場固めをしておく」
 政を行うことによってというのだ。
「そうする」
「それでは」
「そしてじゃが」
 晴信は山本にさらに話した。
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